電気自動車の200V充電工事費用は?相場と安く抑えるコツ

電気自動車 200V充電工事費用:相場と安く抑えるコツ

こんにちは。横浜電気工事レスキューの主任電気工事士「天谷(あまたに)富士夫」です。

最近、私の現場でも「ガソリン車から電気自動車(EV)やPHEVに乗り換えたんだけど、自宅で充電できるようにしたい」というご相談が急増しています。

テスラや日産サクラ、アリアなど、魅力的な車種が増えるにつれて、充電インフラの需要も高まっていますね。ただ、初めてEVを購入される方にとって、充電設備の設置は分からないことだらけだと思います。

「ケーズデンキやヤマダデンキなどの家電量販店で頼むべきか、それとも専門業者に直接頼むべきか」「そもそも工事費用はいくらかかるのか」と迷われる方も多いでしょう。

特に、EVコンセントの増設や200V電源工事にかかる費用の内訳や相場は、素人目には分かりにくいものです。

中には「できるだけ安い費用で済ませたい」と考えたり、「DIYなら0円でできるのでは?」と危険な方法を検討される方もいらっしゃいますが、そこには火災や感電といった重大なリスクが潜んでいます。

また、賃貸マンションにお住まいの方や、引き込み線の容量アップ工事が必要なケース、使える補助金の最新情報など、知っておくべきポイントは山積みです。

この記事では、現場のプロである私が、実際の見積もり事例や施工経験を交えながら、電気自動車の充電工事に関する疑問を徹底的に解説します。

記事のポイント

  • 200V充電工事の費用相場と見積もりの内訳・チェックポイント
  • 環境や車種に合わせた最適なEVコンセント・充電器の選び方
  • 工事費を安く抑える配線の工夫と自治体補助金の活用法
  • 賃貸での導入ハードルやDIY工事の法的リスク・危険性
目次

電気自動車の200V充電工事費用と相場の目安

電気自動車(EV)ライフをスタートさせる上で、避けて通れないのが「自宅の充電環境」の整備です。

公共の充電スポットも増えていますが、自宅で寝ている間に満タンにできる利便性は、EVならではの最大のメリットと言えます。しかし、そのためにはご自宅の電気設備をアップグレードする必要があります。

ここでは、実際に私たちが現場でお客様に提示している価格感をベースに、200V充電工事にかかる費用のリアルな目安と、その内訳について詳しく深掘りしていきます。

「ネットで見た価格より高い見積もりが来たけど、ボッタクリじゃないか?」といった不安を解消できるよう、しっかりとした相場観を身につけておきましょう。

自宅でのEV充電器工事の費用内訳と相場

戸建て住宅に標準的なEV充電用コンセント(壁付けタイプ)を設置する場合、工事費用の総額は約6万円〜15万円程度がひとつの目安になります(配線距離や施工条件で変動します)。

以前はもう少し安く施工できるケースもありましたが、近年の材料費(特に電線ケーブル等)の影響もあるため、余裕を見た予算設定をしておくと安心です。

もちろん、これは「分電盤から駐車場までの距離が10m以内」「壁の穴あけが容易な木造住宅」といった標準的な条件での話です。

現場の状況によって費用は変動しますが、私がお客様に見積もりを出す際の内訳は、主に以下の5つの要素で構成されています。

費用の内訳項目相場の目安(税込)具体的な内容と変動要因
1. EV充電用コンセント本体3,500円 〜 15,000円標準タイプか、鍵・カバー付きかによって変動します。高機能な充電スタンド等の場合は20万円以上することもあります。
2. 専用回路増設・配線工事40,000円 〜 80,000円分電盤から駐車場まで、200V専用の太い電線(VVF2.6mm等)を引く作業です。6kW等の倍速充電をご希望の場合は、さらに太いケーブルが必要になるため費用が上がります。
3. 漏電ブレーカー設置5,000円 〜 10,000円EV充電回路専用の「漏電遮断器付きブレーカー」を分電盤内に設置します。感電事故を防ぐための必須部材です。
4. 貫通・防水処理工事5,000円 〜 15,000円家の壁に穴を開け、雨水が入らないように防水処理を行います。コンクリート壁やタイル壁の場合は特殊ドリルが必要で費用が上がります。
5. 諸経費(出張費・申請費)10,000円 〜 20,000円現場への交通費や、電力会社への申請手続き費用などが含まれます。
合計目安約6万円 〜 15万円標準的な露出配線工事の場合の総額目安です。

なぜ「専用回路」が必要なの?

「エアコン用のコンセントから延長コードで引っ張ってこれないの?」と聞かれることがありますが、これは絶対にNGです。EV充電は、長時間にわたって大きな電力を連続して使用します。

たとえば一般的な普通充電では200V・16A(約3kW)、より大容量の充電設備では200V・30A(約6kW)といった条件で充電するケースがあります。

既存のコンセントを流用すると、配線が発熱して火災につながる恐れがあります。

そのため、安全性を確保するために分電盤から他の回路とは独立した「専用回路」で配線し、漏電遮断器(漏電ブレーカ)等を適切に設けることが、メーカーの施工説明書やガイド等でも求められています。

この配線作業の手間と材料費が、工事費用のメインを占めていると考えてください。

戸建ての分電盤前で、電気工事士と日本人の家族がEV充電用200Vコンセント工事の見積もり内訳を確認している様子。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

200Vコンセント工事費用の目安と製品価格

次に、実際に壁に取り付けるコンセント本体の種類と費用について解説します。

様々なメーカーから製品が出ていますが、国内シェアのほとんどを占めるパナソニック製の製品を例に挙げると、大きく分けて2つのタイプが主流です。

1. 標準型コンセント(WK4322など)

本体価格目安:3,000円〜5,000円

最もシンプルで安価なタイプです。屋根のあるガレージや、シャッターの中に車を停める場合など、雨風や他人の目に触れる心配が少ない環境でよく採用されます。

機能としては十分ですが、ケーブルを挿したままロックする機構がないため、充電中に誰かに抜かれてしまうリスクがゼロではありません。

2. カバー・鍵付きコンセント(WK4422など)

本体価格目安:10,000円〜15,000円

最近の工事では、こちらを選ばれる方が圧倒的に多いですね。コンセント部分に鍵のかかる樹脂製のカバーが付いており、充電ケーブルのプラグを挿した状態でカバーをロックできます。

これにより、「充電中のケーブル盗難」や「近所の子供によるイタズラ」、「勝手に電気を使われる盗電」を物理的に防ぐことができます。

プロからのアドバイス

屋外の駐車場で、通りに面していて誰でも触れるような場所なら、防犯面を考慮して、数千円高くても絶対に「カバー・鍵付きタイプ」をおすすめします。

後から交換すると工事費が二重にかかってしまいますからね。

施主が電気工事士と一緒に、標準型とカバー・鍵付きのEV用200Vコンセントを見比べている場面。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

屋外EVコンセントの種類と設置コスト

先ほど紹介した一般的な「壁付けコンセント」以外にも、設置スタイルにはいくつかのバリエーションがあります。これによって工事費用がガラッと変わるので、ご自宅の駐車環境に合わせて選ぶ必要があります。

スタンド設置タイプ

駐車場が建物の壁から離れている場合や、オープンスペースの駐車場で壁がない場合に採用されます。地面に金属製のポール(スタンド)を立てて、そこに充電器やコンセントを設置する方法です。

これには電気工事だけでなく、地面を掘ってコンクリート基礎を作り、配管を地中に埋める「土木工事・外構工事」が必要になります。

そのため、壁付け工事に比べてプラス10万円〜20万円以上の費用がかかるケースが多いです。見た目はスッキリしてかっこいいですが、予算は多めに見ておく必要があります。

ケーブル一体型充電器(ウォールボックス・Mode3など)

コンセントではなく、充電器本体から直接充電ガン(コネクタ)付きのケーブルが伸びているタイプです。テスラの「ウォールコネクター」などが有名ですね。

最大のメリットは、いちいち車のトランクから重たい車載ケーブルを取り出さなくて良いことです。

帰宅してすぐにプラグを挿せるので、毎日の充電が劇的に楽になります。ただし、機器本体価格が10万円〜30万円と高額になるため、初期投資は嵩みます。

パナソニック製の充電器のラインナップや、それぞれの特徴・費用相場についてもっと詳しく知りたい方は、『パナソニック製家庭用EV充電器200V完全ガイド!費用と選び方』の記事もあわせて参考にしてみてください。

日本の住宅の駐車場で、日本人の家族と工事担当者が壁付け・スタンド・ケーブル一体型の充電設備を検討している。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

100Vから200Vへの変換や増設工事の費用

「うちは古い家だから100Vしか来ていないかも…」と心配される方もいらっしゃいます。確かに、築30年以上の住宅などでは、家の中まで100Vしか引き込まれていないケースがあります。

電気自動車の充電は、理論上は100Vでも可能です。しかし、100V充電は200V充電に比べて時間が2倍以上かかります。

例えば、バッテリー容量の大きな最新のEVを100Vで満タンにしようとすると、数日間かかることも珍しくありません。

車種やバッテリー容量によっては48時間以上を要する場合もあります。これでは「翌朝までに充電が終わっていない」という事態になりかねず、実用的ではありません。

快適なEVライフには200V化が必須と言えます。

単相3線式なら工事は簡単

まず、ご自宅の分電盤や外の電気メーターを確認してください。電線が赤・白・黒の3本で引き込まれている「単相3線式」であれば、家まで200Vが来ています。

この場合、分電盤内の小さなブレーカーを200V用に切り替えるか、交換するだけで済みます。この切り替え作業自体の追加費用は、数千円〜1万5千円程度で済むことがほとんどです。

単相2線式の場合は要注意

もし電線が2本の「単相2線式」だった場合は、電柱から家までの引き込み線を張り替える大掛かりな工事(幹線張り替え工事)が必要になります。

電力会社への申請や、分電盤自体の交換もセットになるため、10万円〜20万円以上の費用がかかることもあります。

ご自宅の状況がどちらか分からない場合は、分電盤の写真をご用意いただくか、私たちのようなプロに現地調査をご依頼ください。

電圧切り替え工事やコンセント交換が実際にどのように行われるのか、具体的な施工イメージについては、『100V/200Vの電圧変更とコンセント交換の施工事例』の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

施主が屋外メーターと分電盤を電気工事士と確認し、200V化の可否を点検している様子。
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引き込み線工事の必要性とDIYのリスク

EV充電器設置の際、もう一つ注意しなければならないのが「契約アンペア数」と「引き込み線の容量」です。

EV充電は、一般的な200V充電で約3,000W(3kW)の電力を消費します。これは、ドライヤー(1,200W)2.5台分をずっと使い続けているようなものです。

現在の契約が30Aや40Aといった低めの設定だと、EV充電中に電子レンジやエアコンを使った瞬間に、家中のブレーカーが落ちてしまいます。

もし、EVを導入する前から「頻繁にブレーカーが落ちる」「原因がよくわからない」という症状がある場合は、漏電などのトラブルが隠れている可能性もあります。

頻繁にブレーカーが落ちてしまう詳しい原因や、その際の対処法については、以下の『頻繁なブレーカー落ちの原因は?漏電調査と分電盤交換の施工事例』の記事で解説していますので、ぜひ一度チェックしてみてください。

これを防ぐために契約アンペアを上げる(例:60Aや10kVAへ変更)ことがありますが、家の引き込み線が細い場合、許容電流を超えてしまうため、電線を太いものに張り替える工事が必要になります。

これに伴い分電盤交換が必要になると、さらに5万円〜10万円ほどの費用を見込んでおく必要があります。

分電盤自体の交換が必要になった場合、「工事中はどれくらい停電するの?」「具体的な作業内容は?」といった疑問については、実際の施工事例をまとめた『分電盤交換の停電時間・交換目安・費用相場が分かる施工事例』の記事が参考になります。

【警告】DIYは絶対にダメ!法的な罰則と命の危険

インターネットで部材を買って「自分で工事すれば安く済む」と考える方がいますが、これは電気工事士法という法律で厳格に禁止されています。

電気工事士の資格が必要な工事を無資格で行った場合、電気工事士法により「3万円以下の罰金または3ヶ月以下の懲役」が科される可能性があります。

何より怖いのは、施工不良による発熱・発火や感電事故です。EV充電は連続負荷が大きいため、少しの接続不良が重大事故につながりかねません。

また火災保険についても、契約内容や事故状況によっては補償対象外となる可能性があります。「安いから」という理由で無資格工事をするのは絶対にやめてください。

もし、古い電気設備で「焦げ臭いにおい」などの異変を感じている場合は、すでに漏電や過熱などの危険が迫っている可能性があります。

不安な方は、以下の『漏電調査と分電盤交換で実現!築年数が経過した住宅の電気トラブル解決事例』の記事もあわせて参照し、早めに専門家へご相談ください。

住人が資格者から、EV充電の専用回路や分電盤の安全対策について説明を受けている場面。
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ケーズデンキ等での見積もりと業者の選び方

EV充電工事をどこに頼むか、というのも悩みどころです。ケーズデンキやヤマダデンキ、ビックカメラなどの大手家電量販店を思い浮かべる方も多いでしょう。

量販店のメリットは、店舗が多くて相談しやすいことや、ポイントが付与される場合がある点です。

ただ、裏側の仕組みをお話しすると、量販店が直接工事をするわけではありません。実際の工事は提携している下請けの電気工事業者が行います。

そのため、量販店の手数料(中間マージン)が乗っかる分、私たちのような地元の電気工事専門店に直接依頼するよりも費用が割高になる傾向があります。

また、窓口の担当者と現場の職人が違うため、「現地調査で伝えたことが工事当日に伝わっていなかった」「配線ルートの融通が利かなかった」というトラブルも耳にします。

細かい要望を伝えたい場合や、費用を抑えたい場合は、直接施工の専門店に依頼するのがベターです。

信頼できる業者を見極める3つのポイント

  • EV充電設備の施工実績が豊富か
    ホームページに施工事例が写真付きで掲載されているか確認しましょう。
  • 現地調査を丁寧に行ってくれるか
    電話だけで見積もりを出そうとする業者は要注意です。分電盤や壁の状況を見ないと正確な金額は出せません。
  • 見積もりの内訳が明確か
    「工事一式 10万円」といった大雑把な見積もりではなく、部材費や作業費が詳細に書かれているかチェックしてください。
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電気自動車の200V工事費用を安く抑えるコツ

10万円〜15万円という出費は決して安いものではありません。

やはり少しでも安く抑えたいのが本音ですよね。ここからは、ベテラン電気工事士の視点から、安全性は確保しつつ、賢く費用を抑えるための具体的なテクニックをお伝えします。

補助金の活用や、設置プランの選び方など、知っているだけで数万円単位で得する情報もありますよ。

充電設備の自宅工事に使える補助金制度

EV充電設備の設置には、国や自治体から補助金が出ることがあります。これを活用しない手はありませんが、制度は複雑で頻繁に変更されるため注意が必要です。

国の補助金(CEV補助金)について

国の補助金については、最近少し条件が厳しくなっています。

以前は個人宅の充電コンセントも対象でしたが、最近の傾向として、個人の戸建て住宅では「V2H」などの高機能機器が中心で、シンプルな充電コンセントの設置だけでは対象外となるケースが多いのが現状です。

「国からお金が出ると思ってたのに!」とがっかりされないよう、最新情報を次世代自動車振興センターのウェブサイトで必ずご確認ください。

狙い目は「自治体独自の補助金」

そこで、非常に狙い目なのが「お住まいの自治体独自の補助金」です。

例えば東京都では「充電設備普及促進事業」として、戸建て住宅への設置費用に対して手厚い助成を行っています(※年度により条件や有無は異なります)。

神奈川県や横浜市、その他の市町村でも、独自の補助金制度を設けている場合があります。これらは国の補助金とは別の予算で動いていることが多いので、必ずチェックしましょう。

「〇〇市 電気自動車 充電設備 補助金」で検索するか、私たちのような地元の工事業者に聞いてみるのが早道です。

(出典:次世代自動車振興センター『クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金』

申請のタイミングに絶対注意! 補助金の申請タイミングは制度ごとに異なり、「事前申請(契約前・着工前が条件)」のものもあれば、「事後申請(設置後に申請)」のものもあります

見積もりの段階で必ず要綱・手引きを確認し、申請手続きのスケジュールを立てましょう。

施主がパソコンで補助金要件を確認し、工事前の申請タイミングを電気工事士と相談している。
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初期費用0円や安い設置プランの仕組み

最近、インターネット広告などで「EV充電器設置0円!」「実質無料」といったプランを見かけることがあります。「本当にタダで設置できるの?」と魅力的に感じますが、これには必ず理由(カラクリ)があります。

多くの場合は、以下の2つのパターンのどちらかです。

月額利用料(サブスク)モデル

設置費用は無料にする代わりに、毎月数千円のサービス利用料や、リース料を5年〜10年払い続ける契約です。

初期費用はゼロでも、契約期間満了までの総支払額を計算すると、普通に工事費を払って設置するよりも高くなるケースがあります。

電力会社切り替え条件付き

指定の新電力会社(PPS)に電気契約を切り替えることを条件に、工事費を割り引くパターンです。

電気料金単価が高めに設定されている場合があり、長い目で見るとランニングコストが上がってしまうリスクがあります。

目先の「初期費用0円」だけでなく、5年、10年使い続けたときのトータルコストで比較検討することが大切です。長く住む持ち家であれば、最初に工事費を払って自分の資産にしてしまった方が、結果的に安く済むことが多いですね。

家族が電卓とPCを使い、月額プランと買い切り工事の総コストを見比べている場面。
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賃貸マンションでEV充電設備を導入する方法

「賃貸マンションやアパートに住んでいるけど、EV充電器をつけたい」というご相談もいただきますが、これは正直なところ、戸建てに比べてハードルがかなり高いのが現実です。

賃貸物件や分譲マンションの駐車場は、建物の「共用部」にあたります。個人の判断で勝手に壁に穴を開けたり、コンセントを設置したりすることはできません。

必ず管理組合の承認(分譲の場合)や、オーナー・管理会社の許可(賃貸の場合)が必要です。

また、マンションなどの集合住宅で電気工事を行う場合、戸建てとは違った申請手続きや近隣への配慮が必要になります。

設備は異なりますが、マンションでの工事トラブルや注意点については、『古いマンションの電気温水器トラブルと交換前のサイン』の記事も参考になります。

さらに技術的な問題として、「電源をどこから引くか」という課題があります。

自分の部屋(専有部)の電気メーターから駐車場の自分の区画まで配線を引くのは、建物の構造上、物理的に不可能なことがほとんどです。

共用灯などの電源を使うとなると、「電気代を誰がどうやって負担するか(受益者負担の原則)」という複雑な計算が必要になります。

マンション管理スペースで、日本人の住民と管理側が集合住宅向けEV充電サービスの担当者と導入を相談している。
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解決策としての導入支援サービス

個人で大家さんに交渉して工事するのは難しいですが、最近ではWeCharge」や「YourStand」といった、集合住宅向けのEV充電サービスが登場しています。

これらのサービスは、課金システムや利用者認証機能を備えた充電器を設置し、使った人がアプリ経由で電気代+利用料を支払う仕組みを提供しています。

管理組合やオーナーへの説明・提案もサポートしてくれるので、まずはこうしたサービス事業者に相談し、管理組合への導入提案を行うのが現実的なルートでしょう。

200V電源工事にかかる費用はどのくらいか?

記事の前半で費用の全体的な相場はお伝えしましたが、お客様の家ごとに見積もり金額に数万円〜10万円以上の差が出ることがあります。

「うちは友達の家より高いけど、ぼったくり?」と不安にならないために、費用を決定づける具体的な3つの変動要因について、現場のプロの視点で深掘り解説します。

結論から言うと、費用を大きく左右するのは「①分電盤から設置場所までの距離」「②配線ルートと隠蔽の有無」「③外壁の材質」です。

1. 配線距離:長くなるほど材料費と作業費がアップ

多くの電気工事会社や量販店の「標準工事パック」では、配線距離を「10m〜15m以内」と設定していることが多いです。これを超えると、1メートルあたり1,500円〜3,000円程度の追加料金が発生します。

「たかが電線代でしょ?」と思われるかもしれませんが、EV充電に使う電線は通常の屋内配線よりも太く、被覆も頑丈なものを使います。

特に、6kW充電に対応したさらに太いケーブルを使う場合や、地中埋設が必要な場合は、距離が伸びるほど見積もり額への影響が大きくなります。

2. 配線ルート:露出配線 vs 隠蔽配線

ここが最も費用差が出るポイントです。電線をどう通すかで、職人の手間が劇的に変わるからです。

【安価】露出配線(モール・配管仕上げ)

壁の表面や天井の隅に、プラスチック製のモールや金属管を取り付けて、その中に電線を通す方法です。作業が比較的簡単でメンテナンスもしやすいため、費用を抑えられます。

見た目を気にする方もいらっしゃいますが、最近は壁の色に合わせたモールを使うので、意外と目立ちません。

【高価】隠蔽配線(いんぺいはいせん)

「配線が見えるのは絶対に嫌だ」という場合、壁の中や天井裏、床下を通して、配線を完全に見えなくする方法です。

点検口からの狭い作業や、壁の中に通すための特殊な工具が必要になり、建物の構造によっては2人がかりの作業になります。そのため、露出配線に比べて数万円単位で費用が上がることが一般的です。

3. 外壁の材質:穴あけの難易度

施主が外壁沿いで電気工事士と配線距離を測り、露出配線と隠蔽配線のルートを比較している。
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配線を外に出すために壁に穴を開けますが、壁の材質によって難易度が異なります。

  • サイディング・モルタル
    一般的なドリルで施工可能。標準工事内で収まることが多いです。
  • タイル・コンクリート(RC)
    専用のダイヤモンドコアドリルや振動ドリルが必要で、時間もかかります。また、防水処理も慎重に行う必要があるため、特殊作業費として追加料金(5,000円〜数万円)がかかるケースがあります。

【ケーススタディ】シチュエーション別・費用イメージ比較

これらを踏まえて、具体的なシチュエーションごとの費用感(総額)を比較してみましょう。

パターン状況(距離・工法)費用感(目安)解説
最安値ケース分電盤の真裏の外壁に設置 (距離5m以内・露出配線)5万〜7万円配線が最短で済み、壁の穴あけも1箇所。最も安く済む理想的なパターンです。
標準的ケース分電盤から横移動で駐車場へ (距離10m・露出配線)8万〜12万円外壁に配管を這わせる一般的な工事。多くの方がこの価格帯に収まります。
こだわりケース建物の反対側へ配線 (距離15m超・完全隠蔽配線)13万〜20万円天井裏や床下を通す手間賃と、長距離配線の材料費が加算されます。見た目は一番キレイです。

安く抑えるためのプロ直伝「交渉術」

現地調査の際、業者にこう伝えてみてください。

「見た目にはそこまでこだわらないので、露出配線でも良いから、一番安く済むルートで提案してほしい」

私たち施工側も、「隠蔽しなければならない」というプレッシャーがなくなると、作業効率の良い(=工賃を下げられる)最短ルートを提案しやすくなります。

逆に「絶対に配線を見せないで」と言うと、見積もりは高くなるとお考えください。

EV充電の電気代(ランニングコスト)の目安

工事費用とあわせて、導入後にずっとかかる「電気代」についても触れておきましょう。

一般的に、家電製品などの電気代を計算する際は、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が示す「電気料金目安単価」(31円/kWh[税込])を基準にするケースが多いです。

(参考:よくある質問 Q&A|公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会

ただし、この数字はあくまで「比較用の目安」として捉えるのが正解です。

実際の電気料金は、ご家庭の契約プランや地域によって大きく異なります。特に昨今は、燃料費調整額の変動や再エネ賦課金の影響により、実質的な単価が目安の31円より高くなるケースも珍しくありません。

(参考:月々の電気料金の内訳|資源エネルギー庁

一方で、夜間の電気代が割安になる「深夜電力プラン」などを上手に活用すれば、日中よりも大幅に安く充電できる可能性もあります。

EVをお得に乗るためには、工事と合わせて現在の電力契約も見直してみることをおすすめします。

(参考:目安光熱費 | ラベル項目の解説|建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省

夜間に自宅でEVを充電しながら、日本人の家族がタブレットで電気料金プランとランニングコストを確認している。
画像はAI生成によるイメージであり実際のものとは異なります。

電気自動車の200V工事にかかる費用と導入のまとめ

ここまで、電気自動車の200V充電工事について、費用の相場から安く抑えるコツまで詳しく解説してきました。最後に重要なポイントを振り返りましょう。

  • 費用の相場
    戸建ての標準的な工事なら、総額約6万円〜15万円前後を見ておきましょう。
  • 内訳の理解
    本体価格だけでなく、安全を確保するための「専用回路工事」に費用がかかることを理解しましょう。
  • 製品選び
    屋外駐車場なら、イタズラ防止のために「カバー・鍵付きコンセント」を強く推奨します。
  • 安くするコツ
    自治体の補助金を工事契約前などにチェックし、配線ルートを工夫することでコストダウンが可能です。
  • 業者選び
    中間マージンのない地元の専門業者に依頼し、必ず現地調査を行ってもらいましょう。
  • 絶対NG
    事故や火災のリスクがあるDIY工事は法律で禁止されています。絶対にやめましょう。

電気自動車の充電設備は、一度設置すれば10年以上使い続ける大切なインフラです。費用を抑えることも大切ですが、何より大切なのは「毎日安心して使える安全性」です。

万が一の火災やトラブルを防ぐためにも、信頼できるプロに任せるのが一番の節約になります。

横浜・川崎・東京都南部エリアで業者をお探しの方へ

「横浜電気工事レスキュー」では、EV充電設備の設置実績が豊富なプロがお客様の車種やご自宅の状況に合わせた最適なプランをご提案します。

他社の見積もりに納得がいかない方や、配線ルートにこだわりたい方も大歓迎です。お見積もりは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。