電気工事の基礎知識:分電盤の交換費用と注意点を徹底解説

こんにちは。横浜電気工事レスキューの主任電気工事士「天谷富士夫」です。普段は現場でお客様の電気やガスのお困りごとに対応しています。
今回は多くのご家庭で「そろそろかな?」と気にされている分電盤の交換についてお話しします。
分電盤は一度設置すると長く使うものですが、ブレーカーが頻繁に落ちたり、焦げ臭いにおいがしたりすると不安になりますよね。
また、交換費用の相場や、どこに頼むのが正解なのか、そもそも自分でできるのかといった疑問も尽きないと思います。
この記事では、現場のプロとしての経験をもとに、安全かつ損をしないための正しい知識を分かりやすく解説していきます。
記事のポイント
- 分電盤の寿命サインと交換費用の目安がわかります
- 100Vから200Vへの切替やアンペア変更の注意点が理解できます
- DIYのリスクと信頼できる業者の選び方が見えてきます
- 賃貸やマンションでの費用負担のルールがわかります
- 1. 電気工事で分電盤を交換する費用相場と時期
- 1.1. 分電盤の寿命や耐用年数と交換時期の目安
- 1.2. 故障の前兆?異音や焦げ臭い時は漏電に注意
- 1.2.1. 表面の変色や温度上昇もチェック
- 1.3. 分電盤交換の費用や金額の相場と見積もり
- 1.4. 補助金やキャンペーンを活用して安く済ませる
- 1.5. 100Vと200Vの見分け方と切替工事の流れ
- 1.5.1. 3秒でわかる!「電線の本数と色」が決めて
- 1.5.1.1. 赤・白・黒の「3本」がつながっている場合
- 1.5.1.2. 黒・白(または赤・白など)の「2本」しかつながっていない場合
- 1.5.2. 「単相3線式」の場合の切替工事(電圧切替)
- 1.5.2.1. ⒈電圧切替作業
- 1.5.2.2. ⒉コンセント交換
- 1.5.3. 「単相2線式」の場合の工事(単3化工事)
- 1.5.3.1. 【単3化工事の流れ】
- 1.6. 単相200V化や100V切替工事の費用
- 1.6.1. 単相2線式からの変更は高額になる
- 1.7. 30Aから60Aへ容量変更や回路増設の注意点
- 1.8. パナソニックなどメーカーやサイズと蓋の選び方
- 1.8.1. 蓋付きを選ぶのが今のスタンダード
- 1.9. 感震ブレーカー設置で地震対策を強化する
- 1.9.1. 恐ろしい「通電火災」を防ぐための強力な対策
- 1.9.2. 分電盤内蔵型をおすすめする理由
- 1.9.3. 分電盤内蔵型のメリット
- 2. 電気工事の分電盤交換はどこに頼む?業者選び
- 2.1. 資格なしで自分でDIY交換するのは法律違反
- 2.2. 東京電力への申請手続きは必要かプロに確認
- 2.2.1. 申請が「必要」になる主なケース
- 2.2.1.1. 契約アンペア(容量)を変更する場合
- 2.2.1.2. 電気の引き込み方式を変える場合(単3切替など)
- 2.2.1.3. 主幹ブレーカーの容量を変える場合
- 2.2.2. 申請が「不要」なケース
- 2.2.3. ここがポイント!見積もり時の確認事項
- 2.3. ヤマダ電機やホームセンターへ依頼するメリット
- 2.4. 高額請求詐欺に注意!口コミで選ぶ業者の正解
- 2.4.1. 「無料点検」と「飛び込み営業」には絶対に乗らない
- 2.4.2. ネット広告の「格安」と「口コミ」の裏側
- 2.4.3. 信頼できる業者を見抜く3つの質問
- 2.5. マンションや団地は管理組合の許可が必要?
- 2.6. 賃貸アパートは大家さんと相談する費用負担の区分
- 2.7. 専有部と共用部の境界線とマンションの対応
- 2.8. 安全な電気工事のために分電盤交換を検討しよう
- 2.8.1. 分電盤交換で得られる3つの安心とメリット
電気工事で分電盤を交換する費用相場と時期
分電盤は電気設備の心臓部とも言える重要な機器ですが、普段あまり意識しない分、いざトラブルが起きると慌ててしまうものです。
ここでは、プロの視点から交換の適切なタイミングや具体的な費用の相場、そして最近増えている200V化工事などについて、現場の実情を交えて解説していきますね。
分電盤の寿命や耐用年数と交換時期の目安
分電盤は一度つけたら一生もの、と思っている方も多いかもしれませんが、実はしっかりとした寿命があります。
私たち電気工事士の間では、設置からおおむね13年前後(13〜15年程度)が交換の目安とされています。
これは、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)がまとめた「住宅用分電盤用遮断器の更新推奨時期に関する調査報告書」をもとに、日本配線システム工業会などが「住宅用分電盤は13年を目安に更新を検討する」と周知している内容と一致しています。
もちろん、13年経ったらすぐに壊れるというわけではありません。
しかし、内部のブレーカーや端子台は、毎日の電気の流れによる熱膨張と収縮を繰り返しているため、徐々に劣化していきます。
特に20年以上経過している場合は、見た目がきれいでも内部の劣化が進んでいる可能性が高いので注意が必要です。
実際、私の経験でも、20年を超えた分電盤はネジが緩んでいたり、樹脂部分が硬化して割れやすくなっていたりすることが多いですね。
税法上の法定耐用年数では、建物附属設備の「電気設備」は原則15年とされていますが、安全面だけを考えると、それより前から定期的な点検や交換を検討するのがおすすめです。
特に、漏電ブレーカーが付いていない古いタイプの分電盤をお使いの場合は、経過年数にかかわらず早めの交換を強くおすすめします。
(参考:一般社団法人 日本電機工業会『住宅用分電盤用遮断器の更新推奨時期に関する調査報告書』)

故障の前兆?異音や焦げ臭い時は漏電に注意
「分電盤からジージーという音がする」「なんとなく焦げ臭いにおいがする」といった症状は、非常に危険なサインです。
これは単なる故障ではなく、内部で接触不良が起きて火花が飛んでいたり、配線が過熱していたりする可能性が高いからです。
表面の変色や温度上昇もチェック
また、分電盤自体が熱を持っている場合や、表面が茶色っぽく変色している場合も要注意です。これらは漏電やトラッキング現象(ホコリが原因での発火)の前兆かもしれません。
特に洗面所やキッチン近くなど、湿気の多い場所に設置されている分電盤は、内部腐食のリスクが高まります。
もし異音や異臭を感じたら、まずは安全のためにメインブレーカーを落とし、すぐに専門業者へ連絡してください。そのまま使い続けると火災につながるリスクがあります。
漏電が疑われる場合の相談先や費用の目安については、『漏電遮断器の交換をどこに頼む?電力会社と業者の料金・サービスを比較』のコラムも参考になります。
分電盤交換の費用や金額の相場と見積もり
皆さんが一番気になるのはやはり費用ですよね。一般的な戸建て住宅の場合、分電盤交換の費用相場は、本体価格と工事費込みで5万円〜10万円程度になることが多いです。
ただし、これはあくまで「標準的な工事」の場合です。実際には回路数や機能によって変動しますので、以下の表を目安にしてみてください。
| 工事内容・分電盤の種類 | 費用相場(税込目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 標準的な交換(8〜12回路) | 50,000円 〜 80,000円 | 最も一般的なケースです。 |
| 多回路・高機能タイプ(20回路以上) | 80,000円 〜 120,000円 | オール電化住宅や二世帯住宅などで多く見られます。 |
| 感震ブレーカー機能付き | +15,000円 〜 30,000円 | 地震対策として追加費用がかかります。 |
| 単3切替工事(引き込み線工事含む) | 100,000円 〜 150,000円 | 分電盤だけでなく、屋外の配線工事も必要になります。 |
内訳としては、分電盤本体が2万円〜5万円ほど、交換作業費が3万円〜5万円ほど、それに古い分電盤の処分費や出張費が加わります。
見積もりを見る際は「工事一式」という大雑把な表記ではなく、「本体価格」「工事費」「処分費」などが明確に分かれているかを確認しましょう。内訳がはっきりしている業者は信頼できる傾向にあります。

補助金やキャンペーンを活用して安く済ませる
少しでも費用を抑えたい場合、自治体の補助金制度を確認してみるのがおすすめです。
特に「感震ブレーカー」などの防災機能を備えた分電盤や機器の設置に対して、補助金や器具代の全額・一部補助を行っている自治体が全国的に増えています。
例えば、横浜市や東京都内の一部の区では、木造住宅密集地域などを対象に感震ブレーカーの購入費・設置費を助成する制度が設けられています。
なお、対象エリアや補助額、受付期間は年度によって変わるため、必ず最新の自治体ホームページで確認してください。
また、私たちのような工事店やメーカーが、特定の時期にキャンペーンを行っていることもあります。
例えば、エアコン設置とセットで分電盤工事を依頼すると割引になる、といったケースですね。お住まいの地域の広報誌や、業者のホームページをチェックしておくと、お得に工事ができるかもしれません。
100Vと200Vの見分け方と切替工事の流れ
最近はIHクッキングヒーターや14畳以上の大型エアコン、あるいは電気自動車(EV)の充電設備など、ハイパワーな200V(ボルト)電源を必要とする機器が一般家庭でも増えてきました。
「買ってきたエアコンのコンセントが合わない!」「IHを入れたいけど工事ができるかわからない」といったご相談も、現場では本当によくいただきます。
実は、ご自宅ですぐに200Vが使えるかどうかは、分電盤を見るだけで誰でも簡単にチェックできるんです。ここでは、プロが現場で行っている確認方法と、工事の具体的な流れを分かりやすく解説します。
3秒でわかる!「電線の本数と色」が決めて
一番確実な見分け方は、分電盤の一番左側にある大きなブレーカー(アンペアブレーカー、または主幹漏電ブレーカー)に入っている電線の「本数」と「色」を確認することです。
赤・白・黒の「3本」がつながっている場合
これは「単相3線式」です。100Vと200Vの両方を使える環境が整っています。簡単な切替工事だけですぐに200V機器が使用可能です。
黒・白(または赤・白など)の「2本」しかつながっていない場合
これは「単相2線式」です。残念ながら現状では100Vしか使えません。200Vを使うには、電柱からの引き込み線を張り替える工事が必要です。
| 種類 | 電線の特徴 | 200V対応状況 |
|---|---|---|
| 単相3線式 (現在主流) | 3本線 (赤・白・黒) | ○ 対応可能 分電盤内のスイッチ切替とコンセント交換のみでOK。費用も安く済みます。 |
| 単相2線式 (築古物件に多い) | 2本線 (黒・白など) | × そのままでは不可 屋外の引き込み線から交換する「単3化工事」が必要です。 |
「単相3線式」の場合の切替工事(電圧切替)
ご自宅が「単相3線式(3本線)」であれば、工事は非常にスムーズです。分電盤自体を交換する必要はなく、以下の2ステップで完了します。
⒈電圧切替作業
分電盤内の子ブレーカーを200V用に切り替えます。最近のブレーカーは「100V/200V切替スイッチ」の操作で済みますが、機種によってはブレーカーそのものを「200V対応型」に交換する必要があります。
また、電圧切り替えに伴い、誤接続防止のため分電盤内の配線結線(赤・黒・白の繋ぎ変え)を電気工事士が適切に行います。
⒉コンセント交換
普通の100Vコンセントを、200V専用の形状(3つ穴など)のコンセントに交換します。誤って100V機器を挿さないようにするためです。
この作業だけであれば、所要時間は30分〜1時間程度。費用も数千円〜1万5千円程度で収まることが一般的です。
「単相2線式」の場合の工事(単3化工事)
もし「単相2線式(2本線)」だった場合は、少し大掛かりな「単相3線式への変更工事(通称:単3化)」が必要になります。
これは、電柱から家まで電気を運んでくる「引き込み線」と「電気メーター」、そして「分電盤」の3つ全てを交換する工事です。
【単3化工事の流れ】
①現地調査 → ②電力会社への申請(約1〜2週間) → ③屋外の配線工事・メーター交換 → ④屋内の分電盤交換 → ⑤完了
因みに費用は総額で10万円〜15万円以上かかることもありますが、これを行うことで200V機器が使えるようになるだけでなく、家全体で使える電気の容量(アンペア数)も増やせるため、ブレーカーが落ちる悩みも同時に解決できます。
リフォームや家電購入を機に、思い切って工事されるお客様も多いですよ。

単相200V化や100V切替工事の費用
もしご自宅がすでに「単相3線式」であれば、100Vから200Vへの切替工事(電圧切替とコンセント交換)は、標準的な条件なら数千円〜1万円台で収まることが多いです。
分電盤内でブレーカーや配線の接続を変更し、必要に応じて専用回路を増設する程度の工事で済むケースが一般的だからです。(いずれも電気工事士による施工が必須です)
単相2線式からの変更は高額になる
一方で、「単相2線式」から「単相3線式」に変更する場合(単3化工事)は、分電盤自体の交換に加え、引き込み線の張り替えやメーター周りの工事も必要になるため、総額で10万円〜15万円以上かかることも珍しくありません。
この工事は東京電力などの電力会社への申請も必要になるため、工期も長くなる傾向があります。
家電量販店で「工事費別」と言われて購入したエアコンが、いざ取り付けようとしたらこの工事が必要でキャンセルになった、という話もよく聞きますのでご注意ください。
30Aから60Aへ容量変更や回路増設の注意点
家族が増えたり、電気製品が増えたりして「アンペア数を上げたい」というご相談もよくいただきます。30Aから40A、60Aへと変更する場合、契約変更だけで済む場合と、工事が必要な場合があります。
今の分電盤や引き込み線が60Aに対応していない場合、そのまま契約容量だけ上げると設備が過熱して火災の原因になりかねません。
そのため、太い電線に対応した分電盤への交換や、幹線の張り替え工事が必要になることがあります。
特に、容量を30Aから50A・60Aへと大きく上げる場合、従来の電力会社のブレーカー(SB)も交換が必要になりますが、現在はそれを設置しない「SBレス化(スマート契約)」が選べます。
スマートメーターで電気を管理する方式に切り替えることで、分電盤内の大きなSBスペースが不要になり、容量を上げても分電盤をコンパクトにできます。
さらに、一度この方式にすれば、今後のアンペア変更はリモート操作で完了するため、工事の立ち会いが不要になるという大きなメリットもあります。
古い分電盤で容量不足を感じているなら、単なる交換ではなく「スマートメーター対応(SBレス)盤」への変更と容量アップをセットで行うのが、今の賢い選択です。
将来的にエアコンやEV充電設備を増やす予定があるなら、最初から回路数に余裕のある分電盤を選んでおくのが賢い選択です。
契約アンペアの変更に伴う電力会社側の対応や、工事費用の考え方については、『アンペア変更工事の費用はいくら?基本無料?料金相場を解説』のコラムで詳しく解説しています。
パナソニックなどメーカーやサイズと蓋の選び方
新しく交換する分電盤のメーカー選びですが、現在国内でシェアが高いのはパナソニック(Panasonic)、河村電器産業、日東工業などです。
私たちプロから見ても、パナソニックの「スマートコスモ」や「コスモパネル」シリーズは施工性が良く、機能も充実しているのでおすすめです。
蓋付きを選ぶのが今のスタンダード
選び方のポイントは「蓋(ふた)付き」を選ぶことです。ホコリの侵入を防げるので、トラッキング現象による火災リスクを減らせますし、見た目もすっきりして生活感を隠せます。
サイズについては、現在の設置場所のスペースに合わせて選ぶ必要がありますが、最近の機種はコンパクトになっているので、同じサイズでも回路数を増やせることが多いですよ。
交換前に設置場所の縦横サイズを測っておくと、スムーズに相談できます。
(参考:パナソニック『住宅分電盤に関するQ&A:寿命・取替え時期』)

感震ブレーカー設置で地震対策を強化する
地震が多い日本において、今や分電盤交換の「必須オプション」と言っても過言ではないのが、感震ブレーカー機能です。
お客様の中には「地震で停電するんだから、ブレーカーなんて関係ないんじゃない?」と思われる方もいらっしゃいます。
でも、実は地震による火災の多くは、揺れている最中ではなく、揺れが収まって電気が復旧した後に発生しています。
恐ろしい「通電火災」を防ぐための強力な対策
過去の大震災(阪神・淡路大震災や東日本大震災など)では、原因が判明した火災のうち約6割前後が電気を原因とする出火と報告されており、このような停電復旧時の出火が「通電火災」と呼ばれています。
- 倒れた電気ストーブやアイロンに、再通電して畳や布団が燃え出す
- 家具の下敷きになって傷ついた電気コードが、再通電でショートして火花が出る
- 熱帯魚の水槽ヒーターが空焚き状態になり発火する
住民が避難して誰もいない家で、電気が復旧した瞬間にこれらが同時に起こるおそれがあります。
感震ブレーカー機能付きの分電盤にしておけば、震度5強程度以上の揺れを感知した際に自動的に主幹ブレーカー(大元の電気)を遮断し、通電火災のリスクを大きく減らすことが期待できます。
(参考:総務省消防庁『今、備えよう。大規模地震時における電気火災対策(通電火災・感震ブレーカー)』)
分電盤内蔵型をおすすめする理由
感震ブレーカーには、コンセントに後付けするタイプや、ブレーカーのつまみに「重り」をぶら下げる簡易的なタイプもあります。
しかし、私たちプロが分電盤交換のタイミングで内蔵型(または機能付加型)を強くおすすめするのには理由があります。
分電盤内蔵型のメリット
- 確実性
家全体の電気を根本から遮断できるため、特定のコンセントだけでなく全ての家電を守れます。 - 安全性(避難時間の確保)
即座に電気が消えると夜間避難が危険になりますが、代表的な内蔵型製品では、地震感知から遮断まで「約3分」の猶予時間を設定できるものが多く、警報音で地震を知らせつつ、避難のための明かりを確保してから遮断してくれます。 - 誤作動防止
高性能なセンサーを使用しているため、ドアの開閉や生活振動などによる誤作動がほとんどありません。
標準的な分電盤に比べて、感震機能付きのタイプは商品代が1万5千円〜3万円程度高くなります。
しかし、別途後付け工事をする手間や見た目のスマートさ、そして何より「家族の命と財産を守る保険」として考えれば、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
交換をご検討の際は、ぜひ「感震機能付きで見積もりをお願いします」と一言添えてみてください。

電気工事の分電盤交換はどこに頼む?業者選び
分電盤の交換が必要だとわかっても、いざ頼むとなると「どこに連絡すればいいの?」「ぼったくられないか心配」という不安が出てくると思います。
ここでは、業者選びのポイントや注意点について、業界の裏事情も含めて正直にお話しします。
資格なしで自分でDIY交換するのは法律違反
最近はYouTubeなどでDIY動画が人気ですが、分電盤の交換や配線工事を無資格で行うことは法律(電気工事士法)で禁止されています。
「ブレーカーを交換するだけだから簡単そう」と思うかもしれませんが、電気工事で最も怖いのは「ネジの締め付け不足」です。
プロは既定のトルク(強さ)で確実に締め付けますが、DIYで締め付けが甘いと、数ヶ月〜数年後にその部分が炭化して発火します。
「繋いだ時は使えていたのに、ある日突然火事になる」のが電気の恐ろしさです。
実際、DIYでの作業ミスによりショートさせたり、接続部を焦がしてしまったりして、結局プロに助けを求めるお客様もいらっしゃいます。
私たちプロでも、活線(電気が流れている状態)作業には細心の注意を払います。ご自身やご家族の安全を守るためにも、絶対にDIYでの交換はやめてください。
(参考:経済産業省『電気工事の安全(電気工事士の資格が必要な工事)』)

東京電力への申請手続きは必要かプロに確認
分電盤交換をご検討中のお客様から「電力会社への申請って自分でやらないといけないの?」というご質問をよくいただきます。
結論から言うと、工事の内容によって「必要」な場合と「不要」な場合があり、手続き自体は私たち電気工事業者が代行しますので、お客様が複雑な書類を書く必要はありません。
ただ、どんな時に申請が必要なのかを知っておくと、見積もりの正当性を判断するのに役立ちます。横浜エリア(東京電力管内)を例に、具体的なケースを見ていきましょう。
申請が「必要」になる主なケース
基本的に、電力会社との「契約内容」や「設備の仕様」が変わる場合に申請が必要です。
契約アンペア(容量)を変更する場合
「30Aから50Aに上げたい」といった場合、電力会社側のブレーカー設定やスマートメーターの設定変更が必要になるため、必ず申請が必要です。
電気の引き込み方式を変える場合(単3切替など)
古い「単相2線式(100Vのみ)」から、IHやEV充電が使える「単相3線式(100V/200V)」に変更する場合、電柱からの引き込み線を張り替える必要があるため、大掛かりな申請となります。
主幹ブレーカーの容量を変える場合
漏電ブレーカー(メインのブレーカー)の容量を変更する場合も、電力会社への報告義務があります。
申請が「不要」なケース
一方で、現在の契約内容(アンペア数など)を変えず、単に古くなった分電盤を「同じ性能の新しい製品」に取り替えるだけであれば、原則として申請は不要です。これを「同等交換」と呼びます。
ここがポイント!見積もり時の確認事項
申請が必要な工事の場合、業者側で図面作成やWEB申請などの事務作業が発生します。そのため、見積もりに「申請諸経費」や「東京電力申請費」といった項目が含まれているか必ず確認してください。
逆に、申請が必要な工事であるにもかかわらず「申請なんていらないよ」と言って工事をしようとする業者は危険です。
無申請工事(無断工事)は、最悪の場合、送電を止められたり、将来スマートメーターの交換時などに発覚してトラブルになったりする可能性があります。
「自分の家はどっちだろう?」と迷ったら、まずは今の電気の検針票(またはWEB明細)をご用意の上、私たちにご相談ください。現状とご希望を伺えば、申請が必要かどうかも含めてすぐに判断させていただきます。

ヤマダ電機やホームセンターへ依頼するメリット
ヤマダ電機などの大手家電量販店や、ホームセンターでも分電盤交換を受け付けていることがあります。
これらの店舗に依頼するメリットは、窓口がはっきりしていて入りやすいことや、ポイントがつくことなどが挙げられます。
| 依頼先 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 家電量販店・ホームセンター | 入りやすい、ポイントが貯まる | 仲介手数料がかかる場合がある、対応が遅いことがある |
| 地元の電気工事店 | 直接施工で話が早い、費用が抑えやすい | 業者探しが大変、入りにくい雰囲気があることも |
| 電力会社 | 圧倒的な安心感 | 費用が高めになる傾向がある、下請けが来ることが多い |
ただし、実際に工事に来るのは下請けの電気工事士であるケースがほとんどです。
そのため、中間マージンが発生して費用が少し割高になったり、細かい要望が現場の職人さんに伝わりにくいといったデメリットもあります。
安く済ませたい、直接職人と相談したいという場合は、地元の電気工事店に直接依頼する方がスムーズかもしれません。
高額請求詐欺に注意!口コミで選ぶ業者の正解
残念ながら、私たちの業界にも「悪徳業者」と呼ばれる存在がいることは否定できません。特に最近は、高齢の方や一人暮らしの方を狙った手口が巧妙化しています。
プロの私から見ても「それは許せない」と思うようなケースを耳にすることがあるので、被害に遭わないための防衛策を具体的にお話ししますね。
「無料点検」と「飛び込み営業」には絶対に乗らない
一番多いのが、「近所で工事をしているついでに無料で点検します」と突然訪問してくるパターンです。
彼らは分電盤を少し見ただけで、「漏電している」「このままだと火事になる」と過剰に不安を煽り、その場で数十万円の高額な契約を迫ってきます。
はっきり申し上げますが、私たちのような通常の電気工事店や電力会社が、事前の連絡もなく突然訪問して分電盤の「無料点検」を名目に高額な工事契約を迫ることはまずありません。
「今すぐ交換しないと危険」と言われても、決してその場で契約せず、「家族に相談します」「付き合いのある電気屋に見てもらいます」と言ってきっぱり断ってください。
ネット広告の「格安」と「口コミ」の裏側
インターネットで業者を探す際も注意が必要です。
「分電盤交換 〇〇円〜」という激安価格を謳っていても、実際に現地に来たら「この部品も必要」「追加工事がいる」と次々に加算され、最終的に相場の2倍以上を請求されるケースがあります。
業者選びで頼りになるのがGoogleマップなどの口コミですが、ここにも落とし穴があります。極端に評価が高い口コミばかりで、投稿日が集中している場合などは「サクラ」の可能性があります。
星の数だけでなく、「どんな作業をしてくれたか」「スタッフの対応はどうだったか」といった具体的なコメントが書かれているかをチェックするのが正解です。
信頼できる業者を見抜く3つの質問
電話や問い合わせの際に、以下のことを聞いてみてください。誠実な業者なら、嫌な顔をせずに答えてくれるはずです。
- 「概算の見積もりは出せますか?」
現場を見ないと確定はできませんが、過去の事例から「大体これくらい」という目安は伝えられるはずです。 - 「登録電気工事業者の届出番号を教えてもらえますか?」
電気工事を業として行うには、都道府県知事への登録が必須です。ホームページに許認可番号が記載されているかも確認しましょう。 - 「追加料金が発生する可能性はありますか?」
どんな場合に追加費用がかかるのかを事前に説明できる業者は信用できます。
私たち職人は、お客様の安全を守ることが仕事であり、不安につけ込んでお金を巻き上げることはしません。
もし、相手の業者の説明に少しでも違和感を感じたり、急かされていると感じたりしたら、勇気を持って断るか、別の業者にセカンドオピニオンを求めてください。
適正価格で誠実な仕事をする業者は、探せば必ず見つかりますよ。

マンションや団地は管理組合の許可が必要?
マンションや団地にお住まいの方が分電盤を交換する場合、まずは管理組合や管理会社へ確認することをおすすめします。
分電盤自体は専有部分(自分の持ち物)であることが多いですが、工事のために一時的に全戸停電が必要になる場合や、オートロックとの連動など特殊な仕様になっている場合があるからです。
また、アンペア数を上げる場合は、マンション全体の電気容量に余裕がないと許可が下りないこともあります。トラブルを避けるためにも、事前の確認は必須ですね。
マンションでのアンペア変更工事の費用や工事の流れについては、『 アンペア変更工事の費用と注意点 』の記事で詳しく解説していますので、マンションで分電盤交換やアンペアアップをお考えの方は、あわせてチェックしてみてください。
賃貸アパートは大家さんと相談する費用負担の区分
賃貸アパートにお住まいで、分電盤が古くなって交換が必要になった場合は、一般的には建物設備として大家さんや管理会社の負担となるケースが多いです。
分電盤は建物に付帯する設備とみなされることが多いためです。
ただし、経年劣化や故障ではなく、「エアコンを増やしたいから容量を上げたい」といった入居者の都合で交換する場合は、入居者負担になるか、あるいは許可自体が下りないこともあります。
勝手に交換すると退去時にトラブルになるので、必ず事前に相談してください。
賃貸アパートでアンペア数を上げたい場合は、建物全体の電気容量や契約内容によってはそもそも変更できないケースも少なくありません。
こうした制約や対処法については、『賃貸でアンペア変更ができない理由と解決策』でも詳しく解説していますので、事前に目を通しておくと安心です。
専有部と共用部の境界線とマンションの対応
分譲マンションの場合、玄関付近にあるメーターボックス(MB)内のメーターまでは「共用部」、そこから室内の分電盤までは「専有部」という扱いが一般的です。
つまり、室内の分電盤交換は所有者の責任と費用で行うことになります。
しかし、中には「幹線(太い電線)」の交換ができない構造になっていて、アンペアアップが物理的に不可能なマンションもあります。
ご自身のマンションがどのような構造になっているか、管理規約や竣工図面で確認するか、詳しい電気工事士に現地調査を依頼すると安心です。
室内の分電盤の位置や交換時期の目安については、『分電盤の位置で後悔する前に!設置場所の決め方ガイド』で詳しく解説しています。
専有部の分電盤の安全性や交換タイミングが気になる方は、あわせて参考にしてみてください。
安全な電気工事のために分電盤交換を検討しよう
ここまで、分電盤交換の費用や時期、業者選びについて詳しくお話ししてきました。
最後に改めてプロとしてお伝えしたいのは、分電盤は単なる「電気のスイッチが集まった箱」ではなく、家族の暮らしと命を24時間365日守り続ける「住まいの守護神」だということです。
古い分電盤を使い続けるリスクは、前述した通り漏電や火災に直結します。
しかし、交換することには「リスク回避」以上のポジティブなメリットもたくさんあります。
例えば、最新の分電盤はデザインが非常にスタイリッシュで、リビングや廊下のインテリアを邪魔しません。
また、ホコリが入りにくい構造になっているため、トラッキング現象の予防になるだけでなく、年末の大掃除もサッと拭くだけで済みます。
分電盤交換で得られる3つの安心とメリット
- 防災力の向上
感震ブレーカーや雷サージ保護機能(SPD)を追加することで、地震や雷から家と家電を守れます。 - 将来への備え
回路数に余裕を持たせることで、将来的な電気自動車(EV)の充電設備や、高効率エアコンの導入にもスムーズに対応できます。 - 省エネ意識の変化
HEMS対応などの高機能タイプを選べば、電気の「見える化」が可能になり、無理なく節電に取り組めるようになります。
交換費用は決して安い金額ではありませんが、今後15年、20年と毎日使い続けることを考えれば、1日あたりのコストはわずかなものです。
その投資で、「いつか発火するかもしれない」という漠然とした不安から解放され、枕を高くして眠れる安心感が手に入ると考えれば、決して無駄な出費ではないはずです。
「まだ電気は点くから大丈夫」と先延ばしにしがちですが、電気トラブルはある日突然やってきます。
もし、この記事を読んで「うちの分電盤、大丈夫かな?」「ちょっと見てほしいな」と思われたなら、それは交換を検討すべきベストなタイミングかもしれません。
まずは、お近くの信頼できる電気工事店に、点検や見積もりだけでも相談してみてください。
もちろん、私たち横浜電気工事レスキューでも、横浜・神奈川・東京エリアの皆様からのご相談をいつでもお待ちしております。
無理な営業は一切しませんので、世間話をするくらいの軽い気持ちで、お気軽にお声がけくださいね。安全で快適な電気生活の第一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。



