エコキュートの点検をしないとどうなる?放置リスクと故障原因を解説

こんにちは。横浜電気工事レスキューの主任電気工事士「天谷富士夫」です。
毎日、温かいお風呂やキッチンのお湯を供給してくれるエコキュート。
生活に欠かせない設備ですが、「設置してから一度も点検や掃除をしたことがない」というご家庭は、実はかなり多いのが現状です。
多くの方が、「今のところ普通にお湯が出ているし、壊れていないから大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。
しかし、インターネットで「エコキュート 点検 しないと どうなる」と検索されているあなたは、心のどこかで「いきなりお湯が出なくなったらどうしよう」「修理代が高額になったら困る」「もしかして、見えない内部はすごく汚れているのでは?」といった不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
実は、メンテナンスをしていないエコキュートの内部では、見えないところで確実に汚れが蓄積し、部品の摩耗や劣化が静かに進行しています。
ある日突然、真冬にお風呂に入れない生活になったり、階下への水漏れトラブルに発展して高額な賠償請求が発生したりする前に、正しい知識を持って対策することが大切です。
今回は、現場で数多くの給湯器トラブルや修理対応を見てきた私の経験から、点検を怠った場合に具体的に何が起きるのか、そしてご自身でできる対策について、専門用語をなるべく使わずに分かりやすくお話しします。
記事のポイント
- 点検や掃除を怠った場合に発生する具体的な故障メカニズムと金銭的損失
- 「水抜き」などの自分でできるメンテナンス方法とメーカー別の注意点
- 悪質な訪問販売の手口と、信頼できる点検業者の選び方・費用相場
- 万が一トラブルが起きた際の対処法と、寿命を延ばすための早期発見ポイント
- 1. エコキュートの点検をしないとどうなる?放置のリスク
- 1.1. メンテナンスしてないと故障の原因になる?
- 1.1.1. 1. ヒートポンプの「目詰まり」によるコンプレッサーの致命的故障
- 1.1.2. 2. 貯湯タンク内の「スケール固着」と「水漏れリスク」
- 1.1.2.1. 逃し弁が固着すると
- 1.1.2.2. 減圧弁が故障すると
- 1.1.3. 「数千円」の手間を惜しんで「数十万円」の出費に?
- 1.2. 知恵袋でも話題!点検を怠るとどうなる?
- 1.2.1. 放置による衛生面のリスク
- 1.3. 水抜きしたことがない場合に起きるトラブル
- 1.3.1. 1. タンクの底は「巨大な沈殿槽」になっている
- 1.3.2. 2. 汚れが引き起こすトラブルの連鎖
- 1.3.3. 水抜き不足が招く3つの被害
- 1.3.3.1. お湯が臭くなる・汚れる
- 1.3.3.2. フィルター詰まりと循環不良
- 1.3.3.3. 機器の早期故障
- 1.3.4. 3. 「お湯が臭う」は危険信号
- 1.4. タンクのお湯がすぐなくなる等の不具合
- 1.5. お湯の出が悪い時は配管の水漏れ修理が必要?
- 1.6. エコキュートが壊れた時にお金がない場合の対処
- 1.7. マンションでの水漏れ原因とトラブル事例
- 1.7.1. 1. 「パイプスペース」の防水不備による階下漏水
- 1.7.2. 2. 目に見えない場所での配管腐食
- 1.7.2.1. 実際にあったトラブル事例と損害リスク
- 1.8. お風呂が故障したらどうするべきか
- 1.8.1. 1. まずは「リセット操作」を一度だけ試す
- 1.8.2. エコキュートのリセット手順
- 1.8.2.1. 【重要】 リセット操作は何度も繰り返さないでください。
- 1.8.3. 2. 業者への連絡は「3つの情報」を用意してから
- 1.8.4. 3. 修理までの期間をどう乗り切るか
- 2. エコキュートの点検をしないとどうなるかを理解し対策する
- 2.1. 「定期点検は義務ですか?」「毎年点検したほうがいい?」
- 2.1.1. 法的義務はなくとも「維持管理責任」はある
- 2.1.2. 知っておきたい保証のリアル
- 2.1.3. プロが推奨する「最適な点検スケジュール」
- 2.2. 自分でできるメンテナンスと水抜き方法
- 2.2.1. 基本的な水抜きの手順
- 2.3. パナソニックや三菱などメーカー別の注意点
- 2.4. ダイキン製エコキュートの点検ポイント
- 2.4.1. 最重要:ヒートポンプユニットの「水側ストレーナー」
- 2.4.1.1. 覚えておきたい!メンテナンス不足で出るエラーコード
- 2.4.1.2. エラーコード「H3」
- 2.4.1.3. エラーコード「H59」
- 2.4.1.4. エラーコード「FA」
- 2.4.2. 井戸水対応モデルをお使いの方は特に注意
- 2.4.3. 取扱説明書は「型番検索」でスマホに保存を
- 2.5. 無料点検の勧誘には注意!信頼できる業者とは
- 2.6. 専門の点検業者に依頼する場合の費用相場
- 2.7. エコキュートの点検をしないとどうなるか?のまとめ
- 2.7.1. 本記事の重要ポイント振り返り
エコキュートの点検をしないとどうなる?放置のリスク
「家電製品なんだから、壊れるまで使い倒せばいい」という考え方もありますが、水と電気を高圧で制御するエコキュートに関しては、それは非常にリスクの高い選択です。
定期的な点検やメンテナンスを行わないと、機械の寿命を大幅に縮めるだけでなく、衛生面や家計にも深刻なダメージを与える可能性があります。
ここでは、私が現場で実際に目にしてきた「放置した結果」について、包み隠さずお話しします。
メンテナンスしてないと故障の原因になる?
結論から申し上げますと、メンテナンスをしていないエコキュートは、確実に故障のリスクが高まり、本来の寿命よりもはるかに早く壊れてしまいます。
「たかが掃除でしょ?」と思われるかもしれませんが、エコキュートにとってメンテナンス不足は、人間で言えば「不摂生を続けて健康診断も受けない状態」と同じで、ある日突然、致命的な病気(故障)として表面化するのです。
エコキュートは大きく分けて、エアコンの室外機のような見た目の「ヒートポンプユニット」と、沸かしたお湯を貯めておく背の高い「貯湯タンクユニット」の2つで構成されています。
それぞれの場所で、メンテナンス不足がどのように故障を引き起こすのか、そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。
1. ヒートポンプの「目詰まり」によるコンプレッサーの致命的故障
ヒートポンプユニットは、大気中の熱を集めてお湯を作る、いわばエコキュートのエンジン部分です。
ユニットの裏側や側面には、びっしりと並んだ金属の薄い板「フィン(熱交換器)」がありますが、メンテナンスをせずここに埃や枯れ葉、クモの巣などが詰まると、機械が空気を吸い込めない「吸気不良」の状態に陥ります。
空気が吸えない状態で設定温度のお湯を作ろうとすると、心臓部である「コンプレッサー(圧縮機)」は、必要以上のパワーを出して無理やり運転を続けます。
これは例えるなら、マスクをして全力疾走しているようなものです。当然、コンプレッサーには過度な負担がかかり、摩耗や焼き付きを起こして故障します。
コンプレッサーの交換修理は10万円〜20万円近くかかる高額修理の代表格であり、これが原因で買い替えを余儀なくされるケースが後を絶ちません。
2. 貯湯タンク内の「スケール固着」と「水漏れリスク」
貯湯タンク側で怖いのが、水道水に含まれるカルシウムなどのミネラル分が結晶化した「スケール(水垢)」です。長期間水抜きを行わないと、このスケールがタンク内部や配管に石のようにこびりつきます。
特に危険なのが、タンク内の圧力を調整する安全装置である「逃し弁」や「減圧弁」が、スケールによって固着してしまうことです。
逃し弁が固着すると
お湯を沸かす際、膨張した水の逃げ場がなくなり、タンク内部の圧力が限界を超えて上昇します。
最悪の場合、ステンレス製のタンク自体が圧力に耐えきれず変形したり、亀裂(クラック)が入って水漏れを起こしたりします。タンク本体の亀裂は修理ができないため、即座に全交換(数十万円コース)となります。
減圧弁が故障すると
水圧のコントロールが効かなくなり、シャワーの勢いが不安定になったり、配管の接続部から水漏れを起こしたりします。
逃し弁や減圧弁の劣化による水漏れが実際にどのようなトラブルに発展するかについては、『千代田区で長年使用した電気温水器から水漏れした交換工事の施工事例』も参考になります。
「数千円」の手間を惜しんで「数十万円」の出費に?
定期的に逃し弁のレバーを動かしたり、タンクの水抜きをしたりしていれば、これらのトラブルの大半は防げます。
メンテナンス不足は、単に機械が汚れるだけでなく、エコキュートの寿命を物理的に削り取っている行為なのだとご理解ください。

知恵袋でも話題!点検を怠るとどうなる?
インターネットの知恵袋やSNSなどを見ていると、「10年間何もしてないけど壊れてないよ」「業者の点検なんて不要」といった意見を見かけることがあります。
確かに、運良く10年以上トラブルなしで動く個体もありますが、それはあくまで「結果論」に過ぎません。
私が修理に伺う現場では、長期間メンテナンスをしていないエコキュートのタンク底から、茶色いヘドロのような汚れが大量に出てくるのを何度も見てきました。
これは水道水に含まれるミネラル分や不純物が、長年かけて沈殿・濃縮されたものです。
放置による衛生面のリスク
タンクの底に溜まった汚れ(沈殿物)が限界を超えると、給湯配管に流れ込み始めます。
その結果、お風呂のお湯に「黒いカス」や「白い粉」のようなものが混ざったり、お湯からサビ臭い匂いがしたりするようになります。
一番風呂なのに水が濁っているなんてことも。リラックスするためのお風呂が不衛生な状態になるのは避けたいですよね。

水抜きしたことがない場合に起きるトラブル
「設置してから5年、一度も水抜きをしたことがない」というお客様から点検依頼をいただき、私が現地で排水バルブを開いたときのことです。
透明なお湯が出るはずの排水ホースから、まるでドブ川のような真っ黒く濁った水や、砂利のような茶色い粒状の汚れが数分間にわたってドボドボと流れ出てきました。
横で見ていたお客様が絶句されていたのを今でも鮮明に覚えていますが、これは決して珍しいケースではありません。この「水抜き」という作業をサボってしまうと、タンクの内部では恐ろしいことが起きています。
1. タンクの底は「巨大な沈殿槽」になっている
日本の水道水は世界的に見ても安全性が高いと言われていますが、それでも微量のミネラル分(カルシウム、マグネシウム)や、水道管由来の鉄サビ、不純物が含まれています。
エコキュートのタンクは、常に数百リットルものお湯を貯め続けているため、これらの微細な不純物が長い年月をかけてタンクの底に沈殿し、濃縮されていきます。
水抜きをしないということは、この「ヘドロ状の沈殿物(スラッジ)」をタンクの底に飼い続けているのと同じことです。
タンクの下部には給水用の冷たい水が入ってくるため、沸き上げ時には対流が起こります。沈殿物が増えすぎると、この対流によって汚れが巻き上げられ、タンク全体のお湯に混ざり込んでしまうのです。
2. 汚れが引き起こすトラブルの連鎖
巻き上げられた汚れは、お湯と共に配管を通って家中に運ばれます。その結果、以下のような深刻なトラブルを引き起こします。
水抜き不足が招く3つの被害
お湯が臭くなる・汚れる
一番風呂なのにお湯が白く濁っていたり、黒いカスが浮いていたり、鉄サビ臭かったりする場合、タンク内の汚れが限界を超えて浴槽まで到達している証拠です。衛生的にも非常に良くありません。
フィルター詰まりと循環不良
粒状の汚れが「ふろ循環アダプター」や「ストレーナー」に詰まると、お湯はりができなくなったり、追い焚き機能が働かなくなったりします。
機器の早期故障
泥状の汚れがポンプ内部に入り込むと、インペラ(ポンプの中にある羽根車)を摩耗させたり、温度センサーに付着して誤作動を起こさせたりします。
「故障かな?」と思ったら、実は汚れが原因だったというケースは非常に多いのです。
3. 「お湯が臭う」は危険信号
特に怖いのが、追い焚き配管への汚れの付着です。タンクから送られてきた不純物が配管内にこびりつくと、そこを足場にして雑菌が繁殖し、ヌメリのある「バイオフィルム(生物膜)」を形成します。
こうなると、いくら市販の洗浄剤を使っても完全には除去できず、お湯を張るたびにドブのような臭いがしたり、レジオネラ菌などの雑菌が繁殖しやすい環境になってしまうリスクもあります。
(参考:レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針)
ご家族の健康を守るためにも、取扱説明書に記載された頻度を基本としつつ、目安として半年〜1年に1回程度は水抜きを行い、タンクの底をリセットしてあげてください。

タンクのお湯がすぐなくなる等の不具合
「以前よりお湯の減りが早い気がする」「お湯はりをしても設定温度よりぬるい」というご相談もよくいただきます。実はこれも、メンテナンス不足が関係していることが多いのです。
タンクの内部には、お湯の温度を測るための「サーミスタ」という温度センサーが複数取り付けられています。
タンク内に汚れが蓄積すると、このセンサーに汚れが付着し、正確な温度を検知できなくなることがあります。
その結果、エコキュートのコンピューターが「もうお湯は沸いた」と勘違いして沸き上げを途中で止めてしまったり、逆にお湯があるのに無駄な沸き増しを繰り返したりと、制御が乱れてしまいます。
これは湯切れの不便さだけでなく、電気代の無駄遣いにも直結します。
お湯の減りが早いと感じる場合は、『エコキュートで残湯量の減りが早い原因と対策【完全ガイド】』の記事も参考にしてみてください。より詳しい原因と対策を解説しています。
お湯の出が悪い時は配管の水漏れ修理が必要?
シャワーの勢いが極端に弱くなったり、蛇口をひねってもお湯が出るまでに時間がかかったりする場合、メンテナンス不足による2つの原因が考えられます。
一つは「給水ストレーナー(フィルター)」の詰まりです。ここがゴミで塞がると、当然お湯の出は悪くなります。
もう一つ、より深刻なのが「配管からの水漏れ」です。点検をせずに放置していると、屋外の配管接続部のパッキンが劣化していても気づけません。
特に、保温材が紫外線でボロボロになり、むき出しになった配管が腐食して水漏れを起こしているケースは非常に多いです。
知らず知らずのうちに地面にお湯を捨てている状態になり、水道代が跳ね上がることもあります。
「お湯の出が悪いな」と感じたら、まずはフィルター掃除を行い、それでも改善しなければ配管周りの濡れを確認しましょう。
なお、お湯がぬるい場合の対処法については『エコキュートからぬるいお湯しか出ない原因は?故障の判断と対処法』の記事で詳しく解説しています。

エコキュートが壊れた時にお金がない場合の対処
エコキュートの寿命は使用環境やメーカーにもよりますが、一般的には約10年〜15年と言われています。
(参考:エコキュートの平均寿命はどれくらい?寿命の兆候や取り替えのタイミングを解説 | お役立ち情報 | ダイキン工業株式会社)
交換費用も機種や工事内容によって異なりますが、総額で35万円〜75万円程度になることが多く、決して小さな出費ではありません。
「いきなり壊れても、すぐにそんなお金は用意できない!」と焦らないためにも、日頃のメンテナンスで寿命を延ばすことが、実は最大の節約術になります。
実際に、15年使用したエコキュートを故障前に交換した事例として、『エコキュートへの交換を豊島区の戸建住宅で行った施工事例』の記事も公開しています。
交換のサインや工事費用の目安、補助金の活用などを具体的に知りたい方は、あわせてご覧いただくとイメージしやすいと思います。
もし不幸にも故障してしまった場合でも、メーカー保証期間内や、別途加入している延長保証の範囲内であれば無償または一部負担で修理できる可能性があります。
また、落雷や台風などの自然災害が原因で故障した場合は、ご加入の火災保険の補償内容によっては適用されるケースもあります。
金銭的に厳しい場合は、リフォームローンやクレジットカードの分割払いを利用できる業者を探すのも一つの手ですが、やはり一番は「壊れる前に手を入れる」こと。
パッキン交換などの軽微なメンテナンスを数千円〜数万円で行っておけば、本体の致命的な故障を防ぎ、15年近く元気に稼働してくれることも十分可能です。
マンションでの水漏れ原因とトラブル事例
戸建て住宅以上にシビアな管理が求められるのが、マンションにお住まいの方です。
マンションにおけるエコキュートの水漏れは、単にご自宅の設備が壊れるだけでなく、階下の住民を巻き込んだ深刻な「加害事故」に発展するリスクが非常に高いからです。
現場で対応していると、マンション特有の構造や環境が、被害を拡大させてしまうケースが後を絶ちません。なぜマンションでの水漏れが怖いのか、その原因と具体的なトラブル事例を深掘りしてみましょう。
1. 「パイプスペース」の防水不備による階下漏水
マンションのエコキュートは、玄関横などの「パイプスペース(PS)」内に設置されていることが多いですが、実はこのスペース、防水処理が施されていないケースが少なくありません。
通常、エコキュートの逃し弁やポンプから水漏れが起きても、少量であれば排水管へ流れるように設計されています。
しかし、メンテナンス不足で逃し弁が完全に故障し、排水管の処理能力を超える大量の水が噴き出してしまった場合や、排水ホッパー(受け皿)がゴミで詰まっていた場合、水は床下のコンクリートを伝って、そのまま階下の部屋の天井へと染み出していきます。
2. 目に見えない場所での配管腐食
マンションのパイプスペースは閉鎖的で湿気がこもりやすい環境です。点検をせずに長期間放置していると、配管の保温材の中で結露が発生し、金属配管が腐食して小さな穴(ピンホール)が開くことがあります。
これが霧状の漏水となり、誰にも気づかれないまま壁や断熱材を濡らし続け、ある日突然、階下の住人から「天井から水が落ちてきた!」と連絡が入るのです。
実際にあったトラブル事例と損害リスク
- ケース①
逃し弁の故障で一晩中お湯が漏れ続け、階下のお宅の高級家具やピアノが水浸しに。内装工事費と家財弁償で数百万円の請求が発生。 - ケース②
長期不在中に配管が破裂。階下だけでなく、その下の階まで水が達し、複数戸への賠償が必要になった。 - 電気代・水道代への影響
漏水に気づかず、翌月の水道料金が数万円単位で跳ね上がって初めて発覚するケースも。
このように、マンションでの水漏れは「被害者」になるだけでなく、一瞬にして「加害者」になってしまう恐ろしさがあります。
万が一に備えて、ご加入の火災保険に「個人賠償責任特約」が付帯されているか確認しておくと安心ですが、何よりもまずは事故を起こさないことが重要です。
戸建て以上に、10年を超えたエコキュートは漏水などのトラブルリスクが高まる時期だという危機感を持ち、定期的な点検と早めの機器更新を強くおすすめします。

お風呂が故障したらどうするべきか
ある日突然、リモコンにエラーが表示されてお湯が出なくなる。エコキュートの故障は、真冬であれ深夜であれ、予期せぬタイミングでやってきます。
いざその時が来ると、「今夜どうしよう!?」とパニックになってしまう方がほとんどです。
実際に、突然お湯が出なくなってしまったお客様宅でエコキュートを交換し、即日復旧した事例もあります。
『横浜市神奈川区でお湯が出ない緊急事態に対応したエコキュート交換の施工事例』の記事では、故障から交換完了までの具体的な流れや注意点を詳しく解説しています。
修理部品が届くまでに数日、繁忙期であれば交換工事まで1週間以上待たされることも珍しくありません。
その間、銭湯通いや親戚宅への移動で時間もお金も消耗してしまわないよう、プロの視点から「故障発生時の正しい初動」と「復旧までの乗り切り方」を具体的にお伝えします。
1. まずは「リセット操作」を一度だけ試す
「お湯が出ない=即故障」とは限りません。落雷や一時的なノイズ、センサーの誤検知によってシステムがエラーを起こしているだけの可能性があります。
まずは落ち着いて、以下の手順で本体のリセットを行ってみてください。
エコキュートのリセット手順
- エコキュート本体(貯湯ユニット)の漏電遮断器カバーを開ける。
- 漏電遮断器のスイッチを「切(OFF)」にする。
- そのまま1分〜5分程度待つ(内部の電気を放電させる)。
- スイッチを「入(ON)」に戻す。
- リモコンの時刻設定などがリセットされている場合は再設定し、お湯が出るか確認する。
【重要】 リセット操作は何度も繰り返さないでください。
一度試してもエラーが再発する場合は、内部で物理的な故障が起きている可能性が高いです。無理に通電を続けると、基板がショートするなど被害が拡大する恐れがあります。
2. 業者への連絡は「3つの情報」を用意してから
リセットで直らない場合は、速やかに修理依頼をします。
この時、単に「お湯が出ません」と伝えるだけでは、業者は部品の特定ができず、対応が遅れてしまいます。最短で修理に来てもらうために、電話をする前に必ず以下の3点をメモしてください。
- メーカー名と型番
タンク本体のラベルに記載されています(例:HE-○○○など)。 - エラーコード
リモコンに点滅している英数字(例:H54, C03など)。 - 設置年数と症状の詳細
「12年目で、以前から異音がしていた」「昨夜はお湯が出たが朝になったら水になった」など。
連絡先は、設置してくれた施工店がベストですが、連絡がつかない場合はメーカーの修理窓口へ。
設置から10年以上経過している場合は、修理部品の供給が終わっている可能性があるため、最初から交換対応ができる専門業者に相談するのも一つの手です。
3. 修理までの期間をどう乗り切るか
どうしても数日間お湯が使えない場合、銭湯以外にも対策はあります。
例えば、追い焚き機能だけが生きている(タンクのお湯は出るが温度が低いなど)場合は、キッチンのガスコンロや電気ケトルでお湯を沸かして浴槽に足し、追い焚きで温度を維持する方法もあります。
また、故障リスクに備えて、普段から「近所の銭湯や日帰り温泉のリスト」を把握しておくことや、災害時にも使える「身体拭きシート」をストックしておくことも、精神的な余裕に繋がります。
エコキュートの点検をしないとどうなるかを理解し対策する
ここまでは放置することのリスクについて厳しめにお話ししましたが、ここからは「じゃあ具体的に何をすればいいの?」という対策について解説していきます。
専門的な知識がなくても大丈夫です。ポイントさえ押さえれば、どなたでもエコキュートを長持ちさせることができますよ。
「定期点検は義務ですか?」「毎年点検したほうがいい?」
お客様から「エコキュートの点検って車検みたいに法律で決まってるんですか?」とご質問をいただくことがよくあります。
結論から申し上げますと、一般家庭用として設置されているエコキュートに関しては、現時点で法令による定期点検の義務付けはありません。
法律で罰則があるわけではないので、極端な話、一度も点検せずに使い続けることも可能です。
しかし、現場のプロとしての本音を言わせていただくと、「義務ではないから点検しなくていい」と考えるのは、非常にリスクの高い賭けをしているのと同じことなんです。
法的義務はなくとも「維持管理責任」はある
エコキュートは、屋内式ガス瞬間湯沸器などが対象となっている「特定保守製品」のような法定点検の対象には含まれていません。
しかし、メーカーの取扱説明書や保証書をよく読むと、必ず「適切な使用と維持管理(点検など)を行うこと」が使用者の責任として明記されています。
ここが意外な落とし穴なのですが、もしメーカー保証期間や加入している延長保証の期間内に故障したとしても、その原因が「ユーザーがやるべき点検(水抜きや逃し弁の確認など)を怠ったことによるスケール詰まりや腐食」だと判断された場合、メーカー保証の対象外となり、修理費用が全額自己負担になる可能性が高いのです。
知っておきたい保証のリアル
「保証に入っているから大丈夫」と思っていても、メンテナンス不足は「自然故障」ではなく「取り扱い不注意」と見なされることがあります。
義務ではありませんが、無償修理の権利を守るためにも、最低限のセルフチェックは必須条件だと思ってください。
プロが推奨する「最適な点検スケジュール」
では、具体的にどれくらいの頻度で点検すれば良いのでしょうか?「毎年プロを呼ぶのは費用がかかりすぎる」というお気持ちもよく分かります。
そこで私は、以下のような「セルフ点検」と「プロの点検」の組み合わせを推奨しています。
| 点検の種類 | 実施者 | 推奨頻度 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 日常点検 | ご自身で | 月1回程度 | リモコンの時刻確認、エラー表示の有無、浴槽フィルター掃除 |
| 定期点検 | ご自身で | 年2回(半年に1回) | 貯湯タンクの水抜き、逃し弁・漏電遮断器の動作確認、配管の水漏れ目視 |
| 精密点検 | 専門業者 | 3〜4年に1回 | 内部配管のパッキン劣化診断、電気系統の絶縁抵抗測定、ヒートポンプのガス漏れ検査 |
このように、基本的には半年に一度のご自身でのケア(水抜き等)をメインにしつつ、設置から4年目あたりで一度プロに見てもらうのがコストパフォーマンスの良い管理方法です。
ただし、設置から10年を超えた場合は話が変わります。この時期を過ぎると、致命的な故障や漏水などのトラブルが起きるリスクが一気に高まってきます。
義務ではありませんが、事故を防ぐためにも、10年目以降は「1〜2年に一度のプロによる点検」をご検討いただくか、あるいは点検費用を次の買い替え資金に回すための準備を始める時期だとお考えください。

自分でできるメンテナンスと水抜き方法
自分でできるメンテナンスの中で、最も効果的かつ重要なのが「貯湯タンクの水抜き」です。
少し手間はかかりますが、これをやるのとやらないのとでは、タンクの寿命が大きく変わります。基本的な手順をご紹介します。
基本的な水抜きの手順
- 脚部カバーを外して、漏電遮断器を「切」にする(感電防止)。
- 給水止水栓を閉じる(新しい水が入らないようにする)。
- 逃し弁のレバーを上げる(空気を入れる)。
- タンク下部の排水栓を開いて、1〜2分ほどお湯(水)を出す。(※ここでお湯が出ますので、火傷には十分注意してください)
- 排水栓をしっかり閉じる。
- 給水止水栓を開ける(タンクに給水開始)。
- 排水口から水が溢れ出るまで待つ(タンク内の空気を抜く)。(※これを忘れると「エア噛み」の原因になります。)
- 逃し弁のレバーを下げる。
- 漏電遮断器を「入」に戻す。
この作業を行うだけで、タンク底に溜まった沈殿物をかなり排出できます。半年に1回、例えば「年末の大掃除」と「お盆休み」のタイミングで行うなど、決めてしまうのが良いでしょう。
(参考:知っておきたいエコキュートのお手入れ - 個人のお客様)
パナソニックや三菱などメーカー別の注意点
基本的な構造はどのメーカーも似ていますが、推奨される頻度や独自の機能に違いがあります。ご自宅のメーカーに合わせてチェックしてみてください。
| メーカー | 特徴とメンテナンスの注意点 |
|---|---|
| パナソニック | 漏電遮断器の動作テストは「月1回」を推奨しています。「エコナビ」や「リズムeシャワープラス」などセンサー機能が多いため、フィルター汚れによるセンサー誤検知を防ぐためにも、浴槽フィルターのこまめな掃除が大切です。 |
| 三菱電機 | 配管を自動で洗浄する「バブルおそうじ」機能が人気ですが、これはあくまで「追い焚き配管」の洗浄機能です。「貯湯タンクの水抜き」は自動では行われませんので、別途手動で行う必要があります。機能を過信しすぎないようにしましょう。 |
| コロナ | 汚れがつきにくいステンレス配管を採用している機種が多いですが、逃し弁や減圧弁の定期的な動作確認(レバーの上げ下げ)は必須です。 |

ダイキン製エコキュートの点検ポイント
ダイキン製のエコキュートといえば、ダイキンならではの「320kPaの高圧給湯」や、地下水・井戸水でも使える「井戸水対応モデル」を展開しており、非常にパワフルで耐久性が高いのが特徴です。
現場の職人としても信頼しているメーカーの一つですが、その「水への対応力」が高い構造ゆえに、ユーザーによるフィルター掃除が極めて重要になるという側面も持っています。
「ダイキンだから丈夫だろう」と過信して放置していると、特有のトラブルに見舞われることがあります。ここでは、ダイキン製を使用している方が特に重点的にチェックすべきポイントを解説します。
最重要:ヒートポンプユニットの「水側ストレーナー」
他メーカーのエコキュートではあまり頻繁に触る指示がない場所なのですが、ダイキン製においてはヒートポンプユニット(室外機)の背面や側面にある「水側ストレーナー」の掃除が非常に重要です。
ダイキン製は効率よくお湯を沸かすために、ヒートポンプへ送り込む水の量を細かく制御しています。そのため、ここにゴミが詰まって水の流れが悪くなると、すぐにシステムが異常を検知して停止してしまいます。
私が修理に呼ばれて「お湯が沸かない」と相談を受けた際、ここのフィルターを歯ブラシで掃除しただけで直ってしまった、というケースは数え切れないほどあります。
覚えておきたい!メンテナンス不足で出るエラーコード
以下のエラーが表示された場合、まずはフィルター詰まりを疑ってください。
エラーコード「H3」
ヒートポンプユニットの高圧圧力に異常が発生したときに表示されるエラーです。
冷媒回路の詰まりや弁の不具合、熱交換器まわりのトラブルなどが原因で、高圧側の圧力が上がりすぎた場合に検知されます。
むやみにリセットを繰り返さず、本体の電源を切ったうえで、取扱説明書を確認し、専門の電気工事店やメーカーサービスに点検を依頼してください。
エラーコード「H59」
給湯混合弁系統の異常を示すエラーです。
お湯と水を混ぜて温度を調整する「給湯混合弁」の動きが悪くなったり、内部に異物が噛み込んだり、モーターやセンサーに不具合が出た場合などに表示されます。
症状としては、「設定温度と実際に出てくるお湯の温度が合わない」「お湯の温度が安定しない」といったトラブルが代表的です。
このエラーが出た場合も、自己判断で分解せず、専門業者に点検を依頼するのが安全です。
エラーコード「FA」
ヒートポンプユニットの高圧圧力が規定値を超えたときに表示されるエラーです(高圧圧力異常)。
断水や配管の凍結・閉塞、冷媒回路のトラブル、周囲環境の影響などにより、ヒートポンプが異常な状態になった際に保護のため運転を停止します。
まずは本体の電源を切り、配管からの水漏れや断水の有無を確認したうえで、取扱説明書に従い、必要に応じてメーカーサービスや施工店へ連絡してください。
井戸水対応モデルをお使いの方は特に注意
地下水や井戸水を利用されている場合、水道水に比べてミネラル分(カルシウムなど)や砂などの不純物が多く含まれています。
ダイキンの井戸水対応モデルは、これらの不純物が配管に詰まりにくい設計にはなっていますが、魔法のようにゴミを消してくれるわけではありません。
除去された不純物は全てフィルター(ストレーナー)でキャッチされています。
つまり、水道水エリアの方よりもフィルターが詰まるスピードが圧倒的に早いのです。
メーカー推奨の頻度にかかわらず、井戸水をお使いの方は3ヶ月〜半年に一度は必ず点検を行うようにしてください。
取扱説明書は「型番検索」でスマホに保存を
メンテナンス方法は機種によって微妙に異なりますが、ダイキンの取扱説明書はイラストが多く、非常に分かりやすく作られています。
「紙の取説はどこに行ったか分からない」という方は、タンクに貼ってあるシールを見て「型番(例:EQN37TFVなど)」を確認し、スマホで検索してみてください。
公式サイトからPDFですぐに閲覧できますので、それを保存しておくと、いざエラーが出た時に慌てずに済みますよ。

無料点検の勧誘には注意!信頼できる業者とは
ここで一つ、強く注意喚起をさせてください。「近所で工事をしているので、無料でエコキュートの点検をしますよ」と突然訪問してくる業者には要注意です。
こういった業者の多くは「点検商法」と呼ばれる手法を使います。
点検と称して家に入り込み、「このままだとすぐに壊れますよ」「水が汚れていて危険です」などと不安を煽り、高額な浄水器を売りつけたり、まだ使える給湯器の交換契約をその場で迫ったりします。
国民生活センターにも多くの相談が寄せられているトラブルです。信頼できる業者は、依頼もしていないのに突然アポなしで点検に訪問してくることはまずありません。
点検を依頼する場合は、設置してくれた業者さんや、地元の実績ある電気工事店、メーカーの修理窓口に「自分から」連絡するようにしましょう。
(参考:給湯器の点検にご注意ください-70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!-)

専門の点検業者に依頼する場合の費用相場
ご自身でのメンテナンスに加えて、設置から3年、5年、10年といった節目にはプロに点検してもらうのが理想的です。
メーカーや専門業者に「定期点検」を依頼した場合の費用相場は、おおよそ15,000円〜25,000円程度が一般的です。
この費用で、素人では難しい「絶縁抵抗測定(漏電の予兆チェック)」や「逃し弁・減圧弁の精密な動作確認」「ヒートポンプのガス漏れ検査」「配管保温材の補修」などを行ってもらえます。
これを「高い」と感じるか「安心料」と感じるかは人それぞれですが、数十万円の交換費用を数年先延ばしにできる可能性が高まると考えれば、決して高い投資ではないと私は思います。
そうはいっても、実際にどれくらいの期間使えるものなのか、さらに寿命を延ばすために普段何に気をつければ良いのか気になりますよね。
『エコキュートの寿命は20年?交換時期と長持ちのコツをプロが解説』の記事では、プロの視点から「交換の目安」と「長持ちさせる秘訣」を詳しく解説していますので参考にしてみて下さい。
エコキュートの点検をしないとどうなるか?のまとめ
今回は「エコキュートの点検をしないとどうなるか」という疑問に対し、メンテナンスを放置することで発生する具体的なリスクや、故障のメカニズムについて現場の視点から詳しく解説させていただきました。
厳しい言い方になってしまった部分もあったかもしれませんが、それは私が現場で「あと少し早くメンテナンスしていれば、交換せずに済んだのに…」という悔しいケースを数多く見てきたからです。
エコキュートの点検を怠ることは、単に機械が汚れるだけではありません。
見えない内部で進行する腐食や劣化を放置し、結果として数十万円単位の経済的損失や、漏水事故という大きなリスクを自ら招き寄せてしまうことと同義なのです。
本記事の重要ポイント振り返り
- 点検不足は寿命を縮める最大要因
小さな不調を見逃し、高額な修理や早期交換が必要になるリスクが格段に高まります。 - 水抜きは必須のメンテナンス
タンク底の不純物を排出しないと、お湯が不衛生になるだけでなく、配管詰まりやセンサー故障を誘発します。 - DIYとプロの使い分けが鍵
半年に1回の「セルフ水抜き」と、3〜4年に1回の「プロによる精密点検」の組み合わせが、最もコスパの良い管理方法です。 - 悪質業者には要注意
「無料点検」を謳う突然の訪問者には家に入ってもらわず、信頼できる地元の専門家に相談してください。
「メンテナンスなんて面倒だな」と感じるのが正直なところかと思います。
しかし、半年に一度、わずか15分〜20分程度の手間をかけるだけで、毎日のお風呂が清潔で快適になり、かつエコキュートの寿命を数年も延ばせる可能性があるなら、これほど効率の良い「節約術」はありません。
ぜひ、次の天気の良い休日には、この記事や取扱説明書を片手に、エコキュートのメンテナンスにチャレンジしてみてください。
もし「自分一人でやるのは不安だな」「もう設置から10年以上経っているから、一度プロの目でしっかり見てほしい」という場合は、無理をせず私たちのような専門家にお声がけください。
横浜電気工事レスキューでは、無理な交換営業などは一切行わず、お客様のエコキュートの状態に合わせた最適なメンテナンスをご提案させていただきます。
快適な給湯生活を守るパートナーとして、いつでも頼りにしていただければ幸いです。


