シーリングファンは意味がないというのは誤解!効果的な使い方を解説

シーリングファンに意味がないというのは誤解!効果的な使い方を解説

「シーリングファンは意味ない」という声を耳にして、設置をためらっていませんか。

確かにおしゃれな見た目ですが、その効果については「本当に涼しいですか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

特に、天井が低いマンションでの効果や、吹き抜けがない家ではいらないのでは、と後悔を恐れる気持ちはよく分かります。

この記事では、シーリングファンに関するデメリットや、逆効果となる失敗例を詳しく解説します。

さらに、夏と冬での回転の向き、気になる電気代、サーキュレーターとどっちを選ぶべきか、DCモーターとACモーターの違い、リビングとダイニングではどっちが最適か、そして取付費用や業者の選び方まで、あなたの疑問に全てお答えします。

記事のポイント

  • シーリングファンが「意味ない」と言われる具体的な理由
  • 夏と冬で効果を最大化する正しい使い方
  • 電気代や性能を左右するモーター(DC/AC)の選び方
  • 設置で後悔しないための注意点と費用相場
目次

シーリング ファンは意味がないと言われる理由

  • いらないと後悔する前に知るべきデメリット
  • 逆効果になる失敗例と正しい使い方
  • 天井低いマンションでの効果は本当にある?
  • そもそもシーリングファンは涼しいですか?
  • リビングとダイニングどっちに設置すべき?

いらないと後悔する前に知るべきデメリット

シーリングファンには多くのメリットがありますが、設置してから「いらない」と後悔しないためには、いくつかのデメリットを事前に理解しておくことが重要です。

どんなに優れた製品でも、ライフスタイルや住環境に合わなければ宝の持ち腐れになってしまいます。

主なデメリットは、「掃除の手間」「設置場所の制約」「運転音」の3つです。これらを具体的に見ていきましょう。

掃除の手間がかかる

最も多くの人がデメリットとして挙げるのが、羽根に溜まるホコリの掃除です。シーリングファンは室内の空気を循環させるため、空気中のホコリやチリが羽根の上面に自然と蓄積していきます。

ファンは高い位置にあるため、日常的な掃除のついでに、というわけにはいきません。掃除をするには安定した脚立や、伸縮する柄の長い専用のモップなどが必要になります。

特に吹き抜けのような高天井に設置した場合、自力での掃除は難易度が格段に上がります。無理な体勢での作業は転落の危険も伴うため、簡単ではありません。

ホコリが舞い散るリスクと健康への影響

掃除を怠ると、溜まったホコリが飽和状態になり、ファンの回転や振動で部屋中に舞い散ることがあります。これは見た目に不快なだけでなく、アレルギーや喘息を持つ方にとっては症状を悪化させる原因にもなり得ます。

特に、家族が集まるダイニングのテーブル上に設置する場合は、食事中にホコリが落ちてくる事態も考えられるため、定期的なメンテナンスが不可欠です。

この問題を解決するためには、新築やリフォームの計画段階から対策を講じることが理想的です。

例えば、2階の廊下から手の届く位置にファンを設置したり、スイッチ一つでファンが手の届く高さまで降りてくる電動昇降機付きのシーリングファンを選んだりする方法があります。

後付けの場合は、あらかじめプロの清掃業者に定期メンテナンスを依頼することを検討しておくと良いでしょう。

設置には天井の強度や高さが必要

シーリングファンは、照明器具と比較して本体重量がかなり重く、製品によって差がありますが、国内メーカーの例では5kg前後(シンプルモデル)〜10kg弱(照明一体型)が一般的です。

必ず製品仕様を確認し、天井下地の耐荷重を確保する必要があります。

さらに回転による遠心力や振動が常に天井にかかるため、設置には十分な天井の強度が必要不可欠です。特に、木造住宅の天井は、シーリングファンを直接取り付けられるほどの強度がない場合がほとんどです。

強度が不足している天井に無理に取り付けると、最悪の場合、運転中に落下する大事故につながる危険性があります。

そのため、新築時以外で設置する場合は、天井裏の梁や根太といった構造材にしっかりと固定するか、下地補強工事を行う必要があります。

また、ファンの効果を十分に得るには、ある程度の天井高も求められます。これについては後の見出しで詳しく解説します。

Information

石膏ボードだけの天井には取り付けられないため、必ず梁や下地に固定するか、補強工事を行う必要があります。メーカーの取扱説明書でも「補強材のある位置に確実に固定すること」と明記されています。

製品によってはモーター音が気になる

静かな環境、特に就寝時などには、シーリングファンのモーターが発する「ジー」や「ブーン」といった連続的な運転音が気になる場合があります。

音の感じ方には個人差がありますが、一度気になり始めると大きなストレスになりかねません。特に寝室への設置を検討している方は注意が必要です。

この音の問題は、後述するACモーターDCモーターの選択によって大きく改善できます。静音性を重視するなら、間違いなくDCモーター搭載モデルを選ぶべきです。

デメリットを聞くと不安になるかもしれませんが、これらはすべて事前の計画と製品選びで対策可能です。掃除の手間は設計の工夫で、強度の問題は適切な工事で、音の問題はモーターの選択で解決できます。

デメリットを正しく理解し、ご自身の住環境に合った選択をすることが、後悔を防ぐ一番の近道ですよ。

いらないと後悔する前に知るべきデメリット
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逆効果になる失敗例と正しい使い方

「シーリングファンを付けたのに、まったく効果がないどころか逆効果だった」という失敗例は少なくありません。

高い費用をかけて設置したにもかかわらず、これでは意味がありません。しかし、そのほとんどは、製品の性能ではなく、「サイズの選択ミス」「誤った使い方」といった、ユーザー側の知識不足が原因です。

部屋の広さに合わないサイズ選び

シーリングファンの効果は、部屋の広さと羽根の直径のバランスによって決まります。

例えば、12畳の広いリビングに6畳用の小さなファンを設置しても、十分な空気循環が起こらず、「付けても付けなくても変わらない」という状態に陥ります。

逆に、4.5畳の書斎に大きすぎるファンを設置すると、風が強すぎて書類が飛んだり、圧迫感で落ち着かなかったりするでしょう。効果を実感するためには、適切なサイズのファンを選ぶことが大前提です。

部屋の広さに応じた羽根の直径の目安

一般的に、羽根の直径(ブレードスパン)が大きいほど、より少ない回転数で効率的に大量の空気を動かすことができ、穏やかで心地よい風を生み出します。

購入前には、設置する部屋の広さに合ったサイズを確認しましょう。多くのメーカーが畳数に応じた推奨サイズを公開しています。

部屋の広さ(目安)羽根の直径(目安)
~6畳約90cm以下
6畳~12畳約105cm~120cm
12畳以上・吹き抜け約130cm以上

季節ごとの回転方向の間違い

これが最も多く、そして最ももったいない失敗例です。シーリングファンには、夏と冬で切り替えるべき回転方向があり、それぞれで生み出す気流の向きが異なります。

これを間違えると、効果がないばかりか、深刻な不快感の原因になります。

夏(冷房時)
反時計回り(下向きの風)で、体に風を当てて体感温度を下げる。
冬(暖房時)
時計回り(上向きの風)で、天井に溜まった暖気を循環させる。

冬に暖房をつけているのに、冷房時と同じ下向きの風を送ってしまうと、体に直接冷たい風が当たり、かえって寒く感じてしまいます。

これが「逆効果」の正体です。取扱説明書をよく確認し、季節の変わり目には必ず回転方向を切り替える習慣をつけましょう。

Information

取扱説明書に「Forward/Reverse」などの表記がある場合は、それに従って設定してください。

高すぎる吹き抜けでの注意点

前述の通り、天井高が5mを超えるような極端に高い吹き抜けの場合、冬場でもあえて「下向きの風」を微風で送る方が、暖気が足元まで届きやすいケースもあります。

これは、上向きの風では暖気が壁を伝って降りてくるまでに拡散してしまい、居住空間まで届きにくくなることがあるためです。ご自宅の環境に合わせて、最も快適に感じる使い方を調整してみてください。

Information

一般住宅では冬は上向き運転が基本ですが、天井が極端に高い空間ではメーカーによって「低速の下向き」運転を推奨する場合もあります。実際の室温分布や取扱説明書を確認して調整することが大切です。

逆効果になる失敗例と正しい使い方
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天井低いマンションでの効果は本当にある?

「シーリングファンは吹き抜けや高い天井の家にあるもの」というイメージが強く、天井が低い一般的なマンションでは効果がない、あるいは危険ではないかと考える方は多いです。

結論から言うと、製品選びと設置場所を間違えなければ、天井が低い部屋でも十分に効果を発揮し、毎日の暮らしを快適にしてくれます。

シーリングファンの最も重要な役割は「空気の循環」です。天井が低くても、エアコンの冷気は下に、暖気は上に溜まるという物理法則は変わりません。

シーリングファンを適切に設置すれば、この温度ムラを解消し、エアコン効率を向上させることができます。

ただし、最も重要なのは、床から羽根までの高さを確保することです。

建築基準法では居室の天井高は2m10cm以上と定められていますが、安全かつ圧迫感なく使用するためには、メーカー基準で「床から羽根の最も低い部分まで2.0〜2.1m以上」が必要です(例:DAIKOは2.0m以上、三菱電機は2.1m以上を推奨)。

天井高2.4mの住戸では、薄型モデルを選べばこの条件を満たせます。

(参考:施工説明書(シーリングファン)|DAIKO)(参考:取扱説明書(シーリングファン)|三菱電機)

安全な距離(クリアランス)を確保できない場合のリスク

この高さを確保できない場合、単に圧迫感があるだけでなく、実際に危険が伴います。

例えば、身長の高い人が手を伸ばしたり、子供を肩車したりした際に、回転している羽根に接触して思わぬ怪我をする可能性があります。

また、頭のすぐ上で大きな羽根が回ることで、視覚的な圧迫感や精神的な不快感を覚える原因にもなります。

一般的な天井高(2m40cm程度)のマンションでシーリングファンを設置する場合は、以下の2つのポイントを強く意識して製品を選びましょう。

薄型・軽量タイプの製品を選ぶ

天井からの出っ張りが少ない「薄型(ロープロファイル)」や「簡易取付型」として販売されている製品を選びましょう。

これらのモデルは、全高が30cm程度に抑えられているものが多く、2m40cmの天井高でも床からの距離を2m10cm以上確保できます。

照明と一体化したタイプも多く、既存のシーリングライトからの交換も比較的容易です。

延長パイプ(ダウンロッド)のないものを選ぶ

天井高が2.4m程度の住宅では、延長パイプを使わず薄型モデルを選ぶのが安全です。

一方、吹き抜けや勾配天井ではメーカー推奨に従って延長パイプを使用するケースもあるため、設置環境に応じて判断が必要です。

これらの点を守れば、天井が低いお部屋でも空気循環を促し、エアコンの効率を上げるというシーリングファンの基本的な効果を十分に得ることができます。

諦める前に、ぜひ薄型モデルの製品を探してみてください。

天井低いマンションでの効果は本当にある?
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そもそもシーリングファンは涼しいですか?

「シーリングファンは涼しいですか?」という質問に対しては、「はい、ただしエアコンとは涼しさの種類が異なります」とお答えするのが最も正確です。

この違いを理解することが、シーリングファンへの過度な期待や失望を避けるために重要です。シーリングファン自体が空気を冷却して室温を下げる機能を持っているわけではありません。

シーリングファンが生み出す涼しさの正体は、「気流による体感温度の低下」です。これは「ウィンドチル効果」や「風速冷却」とも呼ばれ、私たちの身近なところで常に起きている現象です。

ウィンドチル効果とは?

人間の体は、皮膚の表面から常に水分が蒸発しています。液体が気体に変わる(蒸発する)とき、周囲から熱を奪います。これを「気化熱」と呼びます。

シーリングファンからの風が肌に当たることで、この水分の蒸発が促進され、気化熱によって体の熱がより多く奪われます。

その結果、実際の室温は同じでも、体感的には涼しく感じるのです。夏の暑い日にうちわや扇風機で涼しく感じるのと同じ原理です。

米国エネルギー省(DOE)は「シーリングファンで快適性を維持しながらエアコン設定温度を約4°F(≒2.2℃)上げられる」と公表しています。

資源エネルギー庁のデータによれば、夏の電力需要がピークになる日中(14時頃)において、家庭での電気使用量のうちエアコンが占める割合は58%にものぼります(参考:夏季の省エネメニュー|資源エネルギー庁)

このように、エアコンは夏の家庭における主要な電力消費源であるため、シーリングファンとの併用で設定温度を適切に調整することが、電気代の節約に大きく貢献します

シーリングファンは部屋をキンキンに冷やすためのパワフルな冷房器具ではなく、心地よい自然な気流を作り出すためのものです

エアコンへの依存度を下げながら、少ないエネルギーで快適な涼しさを得るための賢い道具と言えるでしょう。エアコンの冷えすぎが苦手な方にとっては、まさに理想的な涼環境を提供してくれます。

そもそもシーリングファンは涼しいですか?
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リビングとダイニングどっちに設置すべき?

シーリングファンの設置場所として最も人気なのがリビングとダイニングですが、どちらに設置するかは、それぞれの空間で何を最も重視するか、またどのような暮らしを送りたいかによって決まります。

それぞれのメリットと注意点を比較してみましょう。

リビングに設置するメリット

リビングは家族が長時間過ごす、家の中心となるリラックス空間です。ここにシーリングファンを設置する最大のメリットは、空間全体の快適性を総合的に向上させることです。

優れた空気循環能力
ソファでくつろいでいる時、読書をしている時、どんな時でも穏やかな風が空間全体に行き渡り、冷暖房のムラをなくして快適な温度を保ちます。
リラックス効果
ゆったりと回る羽根を眺めていると、視覚的にも心地よく、リゾートホテルのような非日常的なリラックス感を得られます。
インテリアの主役
リビングの中心に設置することで、空間のアクセントとなり、部屋全体のデザイン性を高めることができます。

特に、吹き抜けや勾配天井のあるリビングでは、シーリングファンの効果が最大限に発揮され、快適性と省エネ性を高いレベルで両立できます。

ダイニングに設置するメリット

ダイニングに設置する場合、食事中の快適性より実用的な目的が重視されます。

ニオイや煙の拡散
焼肉や鍋料理、ホットプレートを使った料理の際に発生する煙やニオイを、ファンの力で素早く拡散させ、換気を補助します。
デザイン性
こだわりのダイニングテーブルやペンダントライトとの組み合わせで、カフェやレストランのようなおしゃれな空間を演出できます。

ダイニング設置時の注意点

前述の通り、ダイニングテーブルの真上に設置する場合、羽根に溜まったホコリが食事に落下するリスクは無視できません。

そのため、リビング以上にこまめな掃除が必須となります。

また、照明一体型を選ぶ際は、料理を美味しそうに見せる光の色(演色性の高さ)にも注意しましょう。青白い光は料理を不味そうに見せてしまうことがあります。

もし予算やスペースに余裕があれば、リビングとダイニングの両方に設置するのが理想的ですが、一つだけ選ぶなら、より滞在時間が長く、空間が広いリビングから検討するのがおすすめです。

リビングの快適性が向上すれば、家全体の満足度も大きく上がりますよ。

リビングとダイニングどっちに設置すべき?
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「シーリングファンは意味がない」は誤解?効果を解説

  • 吹き抜けでこそ発揮される本当の価値
  • 夏と冬で回転の向きを変えるのが重要
  • 電気代と静音性、DCとACの違い
  • サーキュレーターとどっちを選ぶべきか
  • 気になる取付費用と業者の選び方

吹き抜けでこそ発揮される本当の価値

「シーリングファンは意味ない」という意見が全く当てはまらない場所、それが吹き抜けです。

むしろ、吹き抜けのある家にとって、シーリングファンは「生活必需品」と言っても過言ではないほど重要な設備です。

なぜなら、シーリングファンがなければ、吹き抜けが持つ開放感というメリットが、深刻なデメリットに転じてしまうからです。

その理由は、物理学の基本的な性質である「温度成層」、つまり空気の温度による層ができてしまう現象にあります。

暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いため、何もしなければ吹き抜けのような縦に長い空間では、暖かい空気は天井付近に、冷たい空気は1階の床付近に溜まってしまいます。

これにより、家の中に極端な温度差が生まれてしまうのです。

吹き抜けで起こる「温度の断絶」

1階で暖房をいくら強力につけても、その暖かい空気はすべて2階や天井部分へ上昇してしまいます。その結果、熱源である1階のリビングは足元がスースーして一向に暖まらず、誰もいない2階ホールだけが暑いという、エネルギーの無駄遣いが発生します。
逆に、1階で冷房を効かせても、その冷たい空気はすべて重力に従って1階の床付近に留まります。その結果、階段を上がった2階ホールやロフトは、屋根からの熱と1階からの熱気が溜まり、蒸し風呂のような不快な空間になってしまいます。

このような極端な温度差は、不快なだけでなく、冷暖房エネルギーの大きな無駄遣いに他なりません。

シーリングファンは、この完全に分離してしまった暖かい空気と冷たい空気を、その大きな羽根でゆっくりとかき混ぜ、家全体の温度を均一化するという、他に代えがたい重要な役割を担うのです。

この効果により、1階に設置されたエアコンのサーモスタットが家全体の平均温度を正確に感知できるようになり、無駄な運転が劇的に減少します。

結果として、家中のどこにいても快適な室温を保ちながら、大幅な光熱費の削減を実現できるのです。

吹き抜けでこそ発揮される本当の価値
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夏と冬で回転の向きを変えるのが重要

前述の通り、シーリングファンの効果を最大限に引き出す鍵は、季節に応じた回転方向の使い分けにあります。

このシンプルな操作を知っているかどうかで、快適性と省エネ効果に天と地ほどの差が生まれます。高価なシーリングファンを設置しても、この知識がなければその価値は半減してしまいます。

夏(冷房使用時)の回転方向:反時計回り(Downdraft)

夏、または冷房を使用する時期は、ファンを反時計回りに回転させます。これにより、気流は天井から床に向かう「下向き」になります。

この下向きの風、つまり「ダウンフロー」が居住空間にいる人の肌に直接当たることで汗の蒸発を促し、体感温度を効果的に下げてくれます(ウィンドチル効果)。

エアコンの設定温度を高めにしても涼しく感じられるため、消費電力を抑え、環境にも家計にも優しく夏を乗り切ることができます。

冬(暖房使用時)の回転方向:時計回り(Updraft)

冬、または暖房を使用する時期は、ファンを時計回りに回転させます。

これにより、気流は床から天井に向かう「上向き」になります。この「アップフロー」は、床付近の冷たい空気を吸い上げ、天井に押し上げます。

そして、天井に溜まっていた暖かい空気と混ざり合いながら、壁を伝ってゆっくりと部屋の下方へ降りてきます。

この方法の最大の利点は、人に直接風が当たらないため、風による寒さを感じることなく、部屋全体の温度ムラを穏やかに解消できる点です。足元の冷えを和らげ、暖房効率を格段に向上させることができます。(参考:Fans for Cooling|U.S. Department of Energy)

回転方向の切り替え方

回転方向の切り替えは、旧来のモデルでは本体のモーター部分にあるスライドスイッチで行うタイプが主流でした。

しかし、最近の特にDCモーターを搭載したモデルでは、リモコンのボタン一つで簡単に切り替えられるものがほとんどです。

年に2回、衣替えのタイミングなどで忘れずに操作を行い、シーリングファンのポテンシャルを100%引き出してあげましょう。

夏と冬で回転の向きを変えるのが重要
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電気代と静音性、DCとACの違い

シーリングファンを一日中回しっぱなしにすると電気代が気になる、という方もいるでしょう。

シーリングファンのランニングコストや快適性は、心臓部であるモーターの種類によって大きく異なります。

モーターには主に「DCモーター」と「ACモーター」の2種類があり、それぞれのメリット・デメリットを理解することが、後悔しない製品選びの重要なポイントです。

項目DCモーター(直流)ACモーター(交流)
電気代(消費電力)非常に安い (約3W~20W)
1時間あたり約0.1円~0.6円
比較的高い (約20W~60W)
1時間あたり約0.6円~1.8円
運転音非常に静か
ささやき声よりも静かなモデルも多い
「ジー」「ブーン」という音が製品によっては気になる
風量調節多段階(5~8段階)・無段階で細かく設定可能。「1/fゆらぎ」など自然な風を送る機能も。「弱・中・強」の3段階程度が一般的
本体価格高価(3万円台~)安価(1万円台~)
特徴省エネで静か。きめ細やかな制御が可能で高性能。現在の主流。構造がシンプルで安価。デザインが豊富だが、性能面では見劣りする。
Information

電気代は、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電力料金の目安単価である「1kWhあたり31円(税込)」で計算した場合の目安です。(2022年7月改定)

消費電力は機種差があります。例として、国内メーカーのDCモーター機では1.7W〜15W程度、ACモーター機では20〜40W程度の範囲が一般的です。

電気代は1時間あたり数円以下に収まるため、24時間運転でも負担は大きくありません。

結局どちらを選ぶべき?

結論として、予算が許すのであれば現在の住宅用としてはDCモーター搭載モデルが圧倒的におすすめです。上の表を見てわかる通り、初期費用以外のほぼすべての面でACモーターを凌駕しています。

特に、1日中つけっぱなしにすることも多いシーリングファンにおいて、ランニングコストの差は数年で本体価格の差を逆転する可能性も十分にあります。

何より、その静音性の高さと、就寝時に最適な「超微風」からパワフルな風まで細かく設定できる快適性は、日々の暮らしの満足度を大きく向上させてくれます。

ACモーター機は、初期費用をとにかく抑えたい場合や、どうしても気に入ったデザインがAC機にしかなかった場合に選択肢となりますが、特に寝室など静かさが求められる場所への設置は慎重に検討すべきでしょう。

電気代と静音性、DCとACの違い
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サーキュレーターとどっちを選ぶべきか

空気を循環させるという目的が似ているため、シーリングファンとサーキュレーターはよく比較されます。家電量販店でも近い場所に陳列されていることが多いでしょう。

しかし、この2つはその役割と得意なことが全く異なるため、「どちらが優れているか」ではなく、「どちらが目的に合っているか」で選ぶ必要があります。

シーリングファンの特徴:空間全体の調和

シーリングファンは、大きな羽根でゆっくりと回転し、部屋全体の空気を大きく、そして穏やかに攪拌(かくはん)することが得意です。

特定の場所を狙うのではなく、広範囲に非指向性(方向性のない)の気流を生み出し、空間全体の温度や湿度を均一化する、いわばオーケストラの指揮者のような存在です。

これは「マクロ」な視点での空気循環装置と言えます。

得意なこと
リビング全体の快適性向上、吹き抜けの温度ムラ解消、冷暖房効率のアップ、空間のインテリア性向上
不得意なこと
特定の場所に強い風をピンポイントで送ること、部屋から部屋への空気の移動

サーキュレーターの特徴:一点集中の突破力

一方、サーキュレーターは、小さく強力なモーターで羽根を高速回転させ、竜巻のような直線的でパワフルな風を特定の方向へ遠くまで送ることが得意です。

その強力な風を壁や天井に当て、その反動で空気を循環させます。部屋の隅から隅へ、あるいはエアコンの冷気を隣の部屋へ、といった明確な目的を遂行する狙撃手のような存在です。

これは「ミクロ」な視点での空気移動装置です。

得意なこと
部屋干しの洗濯物を集中乾燥、隣の部屋への送風、エアコンの死角に風を送る、窓からの換気効率アップ
不得意なこと
部屋全体の空気を穏やかに、人に不快感なく循環させること

このように、「空間全体を継続的に快適にしたい」ならシーリングファン「特定の目的のために一時的に、強力な空気の流れを作りたい」ならサーキュレーターと考えると分かりやすいです。

もちろん、両者は競合するものではありません。

リビングにシーリングファンを設置しつつ、部屋干し用にサーキュレーターを併用するなど、それぞれの長所を活かして組み合わせることで、さらに快適な住環境を実現できますね。

サーキュレーターとどっちを選ぶべきか
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気になる取付費用と業者の選び方

シーリングファンの導入において、意外と見落としがちなのが取付工事費用です。「本体はネットで安く買ったけど、工事費が高くついた」というケースも少なくありません。

費用は設置場所の状況や依頼する業者によって大きく変動するため、事前にしっかりと相場を把握し、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。

取付費用の相場

費用は大きく分けて、天井の状況に応じた3つのケースが考えられます。

【ケース1】既存の照明器具(引掛シーリング)と交換する場合

天井に「引掛シーリング」という照明用の電源がすでにあり、かつ天井に十分な強度がある場合の最も簡単な工事です。

ドライバー1本で設置できる「簡易取付型」のファンであればDIYも可能ですが、安全を期すならプロに任せるのが賢明です。費用相場は8,000円~15,000円程度です。

【ケース2】新規で配線工事が必要な場合

天井に電源がない場所に新しく設置する場合です。壁のスイッチから天井裏へ電気配線を通す工事が追加されるため、費用は高くなります。費用相場は20,000円~40,000円程度です。

【ケース3】天井の補強工事が必要な場合

天井の強度が不足している場合、安全のために合板などで下地を補強する工事が必須となります。天井を一度開口して作業するため、最も大掛かりな工事になります。

費用相場は下地の状況によりますが、30,000円~60,000円程度、あるいはそれ以上かかることもあります。

高所作業費や出張費も忘れずに確認

吹き抜けなど、床から天井までの高さが3mを超えるような場所への設置には、安全確保のための足場設置費用などとして、別途「高所作業費」が10,000円~加算されるのが一般的です。

また、業者によっては出張費がかかる場合もあります。必ず総額での見積もりを依頼しましょう。

信頼できる業者の選び方

シーリングファンは重量物であり、電気工事も伴うため、設置は必ず専門知識のあるプロに依頼してください。

安さだけで選ぶと思わぬトラブルの原因になります。業者を選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。

【必須】電気工事士の資格を持っているか

これは法律で定められた必須条件です。無資格での工事は違法であり、非常に危険です。

シーリングファンの設置実績が豊富か

経験豊富な業者ほど、様々な天井の状況に的確に対応でき、最適な設置方法を提案してくれます。施工事例などを確認させてもらうと良いでしょう。

事前に明確な見積もりを提示してくれるか

作業内容、部品代、追加料金の有無などを書面で明確に提示してくれる業者を選びましょう。「やってみないと分からない」という曖昧な説明の業者は避けるべきです。

万が一の事故に備え、損害賠償保険に加入しているか

プロであってもミスは起こり得ます。万が一、家財を傷つけられたり、施工不良が原因で事故が起きたりした場合に備え、保険に加入しているかは信頼の証となります。

横浜・川崎・東京都南部エリアで業者をお探しの方へ

この記事を執筆している天谷が所属する「横浜電気工事レスキュー」でも、シーリングファンの取付・交換工事を承っております。

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現地調査から明確なお見積もりの提示まで、資格を持ったプロが責任を持って対応いたしますので、お気軽にお声がけください。

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気になる取付費用と業者の選び方
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シーリングファンは意味がないと感じるのは使い方次第

  • シーリングファンは空気を冷やすのではなく気流で体感温度を下げる
  • 意味ないと感じる原因はサイズや回転方向の間違いが多い
  • 冬は時計回り(上向きの風)で暖気を循環させる
  • 吹き抜けの家では温度ムラ解消に絶大な効果を発揮する
  • 天井が低いマンションでも薄型モデルなら設置可能
  • 安全のため床から羽根まで2m10cm以上の高さを確保する
  • 主なデメリットは掃除の手間と設置場所の制約
  • 長期的な視点ではDCモーターが省エネで静かで圧倒的におすすめ
  • ACモーターは安価だが電気代が高く音が大きい傾向がある
  • 空間全体を快適にするならシーリングファン
  • 特定の場所に風を送るならサーキュレーター
  • 設置は電気工事士の資格を持つ専門業者に依頼する
  • 取付費用は天井の状況により大きく変動する
  • 正しい知識で選んで使えば快適性と省エネ性を両立できる