分電盤の位置で後悔する前に!設置場所の決め方ガイド

分電盤の位置で後悔する前に!設置場所の決め方ガイド

家づくりやリフォームにおいて、間取りやデザインに意識が向きがちですが、分電盤の位置という一見些細な決定が、後々の生活に大きな影響を与えることをご存知でしょうか。

分電盤の位置で後悔しないためには、専門的な知識が不可欠です。

この設置はどこがいいのか?で、多くの人が頭を悩ませる問題であり、例えば利便性を考えて玄関が良いのか、それとも目立たない場所を選ぶべきか迷うところです。

また、新築の現場などでよく見られる浴室のドアの上や、湿気の多い洗面所・風呂場への設置がなぜ多いのか、その理由とリスクを知っておく必要があります。

安易にトイレの中に設置して緊急時に困ったり、不適切な環境が原因で経年劣化が進んでしまったりするケースは少なくありません。

さらに、将来的な家族構成の変化に伴う増設の可能性や、特にマンションにおける特有の制約、そして万が一の移設工事で業者に依頼する際の費用まで、考慮すべきポイントや注意点は多岐にわたります。

この記事では、これらの複雑な要素を一つひとつ丁寧に解き明かし、あなたが分電盤の設置場所で失敗や後悔をすることなく、長年にわたって快適で安全な暮らしを実現するための、確かな知識を提供します。

記事のポイント

  • 分電盤の設置で後悔しがちなNGな場所
  • 安全性と利便性を両立できるおすすめの設置場所
  • 将来の増設や業者に依頼する際の費用に関する知識
  • 設計担当者と相談する前に知っておくべき注意点

    よくある分電盤の位置の後悔と避けるべき場所

    • そもそも設置はどこがいいのか
    • なぜ湿気の多い洗面所や風呂場に設置?
    • 浴室ドアの上が危険とされる理由とは
    • 緊急時に困るトイレの中はNG
    • 不適切な場所が招く経年劣化とリスク

      そもそも設置はどこがいいのか

      分電盤の設置場所を考えるにあたり、まずその役割と設置に関する基本原則を理解しておくことが大切です。

      分電盤は、電力会社から送られてきた電気を、家の中の各部屋やコンセントへ安全に分配するための重要な設備です。

      ブレーカーが収納されており、電気の使い過ぎや漏電が発生した際に電気を遮断し、火災や感電事故から私たちを守ってくれます。

      したがって、設置場所選びで最も優先されるべきは「安全性」と「操作性」です。具体的には、「内線規程」という電気工事の自主技術基準で、点検や操作がしやすい露出した場所への設置が推奨されています。

      また、湿気やホコリが少なく、万が一の際に誰でもすぐに手が届く場所であることが求められます。

      理想的な高さは、分電盤の上端が床からおよそ1.8m前後、ブレーカー操作部が1.3〜1.6m程度になるよう設計されるのが一般的です。

      これは「操作性」と「安全性」の両面を考慮した目安であり、内線規程でも作業や点検が容易な位置に設置することが求められています。

      これらの基本原則を踏まえると、単に「隠せるから」という理由だけで安易に場所を決めるのは、将来的な後悔につながる可能性が高いと考えられます。

      そもそも設置はどこがいいのか
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      なぜ湿気の多い洗面所や風呂場に設置?

      新築住宅などで、分電盤が洗面所や脱衣所に設置されているケースは少なくありません。一見すると、湿気が多く電気設備には不向きに思えるこの場所に、なぜ設置されるのでしょうか。

      これには、主に施工側の都合が関係していると言えます。

      多くの住宅で採用されているユニットバスの天井には、配線などを確認するための点検口が設けられています。

      分電盤をこの点検口の近く、つまり洗面所に設置することで、電気工事業者は天井裏での配線作業を効率的に進めることができるのです。

      外部からの引込線を一度ユニットバスの天井裏に集約し、そこから各部屋へ分配する際に、分電盤が近くにあると作業が格段にスムーズになります。

      しかし、これはあくまで施工の効率性を優先した考え方です。住む人にとっては、湿気による分電盤内部の金属部品の腐食やサビ、それに伴う漏電や故障といったリスクを高める要因になり得ます。

      そのため、内線規程では湿気の多い場所への設置を避けるよう定められています。

      機器の寿命を縮めることにもつながるため、設計段階で他の場所を提案できないか、建築会社や設計士と相談することが賢明な判断です。

      なぜ湿気の多い洗面所や風呂場に設置?
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      浴室ドアの上が危険とされる理由とは

      前述の通り、洗面所、特に浴室のドアの真上は分電盤の設置場所として選ばれがちですが、ここは安全性と耐久性の観点から非常にリスクの高い場所と考えられます。

      最大の懸念点は、やはり「湿気」の問題です。浴室から立ち上る湯気は、目に見えない水分を大量に含んでいます。

      この湿気が分電盤の内部に侵入すると、精密な電気部品や配線の接続部分に結露を生じさせ、金属部分の腐食を促進します。

      腐食が進むと、接触不良による誤作動や発熱、最悪の場合は漏電やショートを引き起こし、火災につながる重大な危険性があります。

      また、ブレーカーが落ちた際の操作性も問題です。入浴直後など、体が濡れた状態で電気設備に触れることは感電のリスクを高め、非常に危険です。

      さらに、浴室の出入り口は人の往来が頻繁なため、万が一分電盤が落下するようなことがあれば、大きな事故につながりかねません。

      これらの理由から、浴室のドアの上は、可能な限り避けるべき設置場所と言えるでしょう。

      浴室ドアの上が危険とされる理由とは
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      緊急時に困るトイレの中はNG

      分電盤を目立たない場所に隠したいという思いから、トイレの中を設置場所に選ぶケースがあります。しかし、この選択は緊急時の対応を著しく困難にするため、推奨されません。

      最も大きな問題は、トイレが施錠されている可能性があることです。地震や火災といった緊急事態が発生した際、あるいは単純にブレーカーが落ちて家中が停電した際、一刻も早く分電盤を操作する必要があります。

      もし誰かがトイレを使用中で内側から鍵がかかっていた場合、ブレーカーを落とすといった初動対応が遅れてしまいます。これは、通電火災などの二次災害を防ぐ上で致命的なタイムロスになりかねません。

      さらに、トイレの空間は一般的に狭く、停電で真っ暗になった状態で操作するのは非常に困難です。

      限られたスペースで懐中電灯などを片手に分電盤のカバーを開け、目的のブレーカーを操作するのは想像以上に大変な作業となります。

      家族の誰もが安全かつ迅速にアクセスできるという原則に照らし合わせると、トイレの中は分電盤の設置場所として不適切であると言わざるを得ません。

      Information

      電気工事の自主技術基準である「内線規程」では、分電盤は原則として「便所その他これに類する場所」には施設しないこと、と定められています。緊急時に容易に立ち入れない可能性があるため、設置場所として明確に不適切とされています。

      緊急時に困るトイレの中はNG
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      不適切な場所が招く経年劣化とリスク

      分電盤の交換時期は、一般的に10〜15年が目安です。

      税法上の「法定耐用年数」は15年とされていますが、これはあくまで会計上の資産価値を示す年数であり、機器の安全な使用期限を保証するものではありません。

      安全のためには、メーカーや業界団体((一社)日本電機工業会など)が推奨する「約13年」を目安に交換を検討することが重要です。

      例えば、パナソニック公式では内蔵ブレーカーの更新推奨時期を「製造後約13年」としており、安全の観点から早めの交換をおすすめしています。

      [Panasonic FAQ]:住宅分電盤に関する Q&A で「内蔵ブレーカーは製造後約13年」

      もし、これまで述べてきたような不適切な場所に設置された場合、経年劣化のスピードは著しく早まり、様々なリスクを生み出します。

      湿気とホコリによる劣化

      洗面所や脱衣所など湿度の高い場所では、内部部品のサビや腐食が進行します。

      また、ホコリが溜まりやすい収納の奥などに設置すると、ホコリが湿気を吸って内部で固着し、電気の流れを妨げるトラッキング現象の原因となります。

      これは、発熱や発火につながる非常に危険な状態です。

      油煙や熱による影響

      キッチンのコンロ近くなど、調理による油煙や熱に直接さらされる場所も避けるべきです。油分は分電盤のプラスチック部品を劣化させ、配線の被覆を脆くします。

      熱も同様に、部品の性能を低下させ、寿命を縮める原因となります。

      これらの劣化は、漏電やショートといった電気的なトラブルを引き起こすだけでなく、分電盤自体の機能不全につながります。

      いざという時にブレーカーが正常に作動しなければ、家全体を火災などの危険にさらすことになります。長期的な安全性を確保するためにも、設置環境を慎重に選ぶことが極めて大切なのです。

      不適切な場所が招く経年劣化とリスク
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      分電盤の位置で後悔しないための最適解

      • おすすめの設置場所としての玄関の利点
      • マンションにおける設置場所の制約
      • 将来の増設を考慮したスペースの確保
      • 移設や増設を業者に頼む際の費用相場
      • 決定前に確認すべきポイントと注意点
      • まとめ:分電盤の位置で後悔しないために

      おすすめの設置場所としての玄関の利点

      これまで避けるべき場所について解説してきましたが、ではどこがおすすめなのでしょうか。多くの専門家が推奨する場所の一つに「玄関」が挙げられます。

      玄関への設置には、他の場所にはない明確な利点が存在します。

      最大のメリットは、プライバシーの保護と業者対応のしやすさです。分電盤の点検や修理、将来的な回路増設の際には、電気工事業者が家の中に入る必要があります。

      もし分電盤が寝室やウォークインクローゼットといったプライベートな空間にあると、その都度、生活空間を見られることになり、精神的な負担を感じる人も少なくありません。

      玄関であれば、リビングなどの主要な居住空間を見せることなく作業をしてもらえます。

      また、災害時など緊急時のアクセス性にも優れています。

      玄関は家の出入り口であり、避難経路の起点となるため、ブレーカーを落とすといった操作が迅速に行えます。デメリットとしては、来客の目に付きやすいという美観上の問題が考えられます。

      しかし、これはシューズクローク(玄関クローク)の中の壁に設置したり、下駄箱の上の壁にインテリアと調和するカバーを取り付けたりすることで、十分に解決が可能です。

      おすすめの設置場所としての玄関の利点
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      マンションにおける設置場所の制約

      マンションで分電盤の位置を考える場合、戸建て住宅とは異なる特有の制約を理解しておく必要があります。まず、設置できる壁が限られるという点です。

      マンションの構造壁(コンクリート壁)には、配線を埋め込んだり、分電盤を埋め込むための大きな穴を開けたりすることは基本的にできません。

      そのため、設置場所は石膏ボードで仕上げられた間仕切り壁などに限定されます。

      また、リフォームやリノベーションで位置を変更しようとしても、既存の配線ルートやパイプスペース(PS)との関係で、移動できる範囲が大幅に制限されることがほとんどです。

      さらに、管理規約の確認も不可欠です。

      分電盤自体は専有部分の設備ですが、アンペア契約の変更(主幹ブレーカーの交換)などが共用部分の設備に影響を与える可能性があるため、規約でルールが定められている場合があります。

      特に、古いマンションでは電気容量が現在の生活スタイルに合っていないことも多く、IHクッキングヒーターの導入などが難しいケースも見られます。

      マンションの場合は、まず既存の設置場所の状況を確認し、変更が可能かどうかを管理組合や専門業者に相談することから始めるのが現実的です。

      マンションにおける設置場所の制約
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      将来の増設を考慮したスペースの確保

      新築や大規模リフォームの際に分電盤を計画するとき、現在の家電製品だけを基準に考えるのは危険です。

      将来のライフスタイルの変化を見越して、電気回路の「増設」を考慮した計画を立てることが、後悔を避けるための重要な鍵となります。

      例えば、数年後に電気自動車(EV)を購入し、自宅に200Vの充電コンセントを設置するかもしれません。あるいは、子供部屋にエアコンを増設したり、高出力の調理家電を導入したりする可能性もあります。

      これらの機器は、安全のために専用の電気回路を必要とすることがほとんどです。

      その際、分電盤にブレーカーを追加するための「空き回路(予備回路)」がなければ、分電盤自体の交換という大掛かりな工事が必要になってしまいます。

      これを防ぐためには、設計段階で少し余裕のある回路数の分電盤を選んでおくことが有効です。また、物理的なスペースも重要です。

      分電盤の隣に、将来サブ分電盤などを増設できるだけの壁面スペースを確保しておくという配慮も、将来の予期せぬ出費を抑える賢明な投資と言えます。

      将来の増設を考慮したスペースの確保
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      移設や増設を業者に頼む際の費用相場

      分電盤の位置に後悔し、後から工事を依頼する場合、その内容によって費用は大きく異なります。安易な場所選びが、将来的にどれほどの金銭的負担につながるかを理解しておくことは大切です。

      最も高額になるのが「移設」です。これは単に分電盤の箱を移動させるだけでなく、家中の壁や天井裏を通っている全ての電気配線を、新しい場所まで延長し直す必要があるためです。

      建物の構造によっては数十万円という高額な費用がかかることも珍しくありません。

      一方で、「増設」や「交換」は、移設に比べれば現実的な費用で済むことが多いです。以下に、一般的な工事内容と費用相場の目安をまとめました。

      工事内容費用相場の目安主なケース
      回路の増設(ブレーカー追加)15,000円 ~ 30,000円程度分電盤に空きがある場合に、エアコンやIHなど専用回路を新設したいとき。
      サブ分電盤の増設40,000円 ~ 80,000円程度分電盤に空きがなく、隣接スペースに小型分電盤を追加できる場合。
      分電盤の交換50,000円 ~ 100,000円以上回路数が不足している・老朽化している場合に、より多回路対応の新型分電盤へ交換。
      分電盤の移設100,000円 ~ 数十万円位置変更が必要な場合。大掛かりな配線の引き直しが発生するため費用が高くなりがち。
      Information

      記の費用はあくまで目安であり、建物の状況や工事の難易度によって変動します。正確な費用を知るためには、複数の専門業者から見積もりを取り、工事内容と費用を比較検討することをおすすめします。

      この表からも分かる通り、最初の場所選びがいかに重要かが見て取れます。

      横浜・川崎・東京都南部エリアで業者をお探しの方へ

      分電盤の交換や移設・増設は、安全に関わる重要な工事であり、専門的な知識と資格(第二種電気工事士以上)が不可欠です。

      もし、横浜市・川崎市周辺で分電盤の設置場所にお悩みだったり、交換工事をご検討されたりしていましたら、ぜひ私たち「横浜電気工事レスキュー」にご相談ください。

      この記事を執筆した専門スタッフが、お客様のご自宅の状況や将来のプランに合わせた最適なご提案をいたします。

      実際の分電盤の工事の様子はこちらでご覧いただけます。

      移設や増設を業者に頼む際の費用相場
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      決定前に確認すべきポイントと注意点

      分電盤の設置場所を最終的に決定する前に、改めて確認しておくべきポイントがいくつかあります。これらを設計担当者や家族と共有し、長期的な視点で最適な場所を見つけ出すことが後悔を防ぎます。

      第一に、家族の生活動線を考慮することです。分電盤の前を頻繁に通るのか、その場所に将来的に家具を置く計画はないか、具体的にシミュレーションしてみましょう。

      特に収納スペース内に設置する場合は、物が溢れて分電盤の正面が塞がれてしまわないか、現実的な収納計画を立てる必要があります。

      第二に、家族全員の操作しやすさです。主に使用する人だけでなく、背の低い家族や高齢の家族でも、踏み台なしで無理なく操作できる高さに設定されているかを確認します。

      第三に、美観と実用性のバランスです。隠すことを優先するあまり、アクセスしにくい場所に設置するのは本末転倒です。

      もし目立つ場所に設置せざるを得ない場合は、分電盤カバーやニッチ(壁のくぼみ)の活用など、建築的な工夫でデザイン性を高める方法がないか相談してみましょう。

      これらの点を総合的に検討し、納得のいく場所を選ぶことが大切です。

      決定前に確認すべきポイントと注意点
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      まとめ:分電盤の位置で後悔しないために

      この記事では、分電盤の設置場所で後悔しないための様々な情報を提供してきました。最後に、重要なポイントを箇条書きでまとめます。

      • 分電盤は家の電気を安全に分ける心臓部
      • 設置場所は安全性と操作性を最優先する
      • 湿気が多い洗面所や風呂場はリスクが高い
      • 浴室ドアの上は腐食や感電の危険がある
      • 施錠される可能性があるトイレの中は避ける
      • 不適切な環境は経年劣化を早め火災の原因にもなる
      • おすすめの場所の一つは玄関や玄関クローク
      • 玄関はプライバシー保護と業者対応に優れる
      • マンションは設置できる壁や規約に制約がある
      • 将来の家電増設に備え予備回路を確保しておく
      • EV充電器などを見据えた計画が重要
      • 後からの移設は配線工事で非常に高額になる
      • 工事費用は増設・交換・移設で大きく異なる
      • 生活動線や家具の配置を考慮して場所を決める
      • 家族全員が無理なく操作できる高さか確認する