長期不在でブレーカーは落とす?正しい知識と注意点

- 1. 長期不在でブレーカーを落とす前に知るべきこと
- 1.1. 落とすとどうなるのか
- 1.1.1. 電力停止で機能しなくなる主な設備
- 1.2. 電気代の基本料金は安くなるのか?
- 1.3. 冷蔵庫のデメリットと注意すべき点
- 1.3.1. 食品の腐敗と悪臭の発生
- 1.3.2. 水漏れによる床へのダメージ
- 1.4. 一週間程度の不在でも必要か?
- 1.5. トラッキング火災を防ぐ対策
- 1.5.1. トラッキング火災とは?
- 2. 長期不在時にブレーカーを落とす安全な方法
- 2.1. 使わない回路のブレーカーだけ切る
- 2.2. 操作する正しい順番
- 2.2.1. 「切る」場合の順番
- 2.2.2. 「入れる」場合の順番
- 2.3. 個別ブレーカーで電気を止めるには?
- 2.3.1. 回路の特定方法(一人でできる)
- 2.4. マンションやアパートでの確認事項
- 2.4.1. 警備会社との連動
- 2.5. 一人暮らしやペットがいる場合の注意
- 2.5.1. 一人暮らしの防犯対策
- 2.5.2. ペットの生命に関わる問題
- 2.5.3. ペットのために稼働が必要な設備
- 2.6. 長期不在でブレーカーを落とす際の判断基準
年末年始の帰省や旅行など、長期不在の際に「ブレーカーは落とすほうが良いのだろうか?」と悩んだ経験はありませんか。
電気代の基本料金を節約したい、あるいは火事のリスクを減らしたいという思いからブレーカーを操作することを考える方は少なくありません。
しかし、正しい知識なしにブレーカーを落とすことには、冷蔵庫の中身がどうなるかといった問題だけでなく、思わぬデメリットや注意点が存在します。
特にマンションやアパートにお住まいの方、または一人暮らしでペットを飼っている場合、その判断はさらに慎重になるべきです。
この記事では、一週間程度の留守から長期にわたる不在まで、ブレーカーを落とす前に知っておきたい全てを解説します。
使わない電気だけを安全に切る方法や、正しい順番、そして電気を止めるにはどうすれば良いのか、具体的な手順を追いながら、あなたの疑問に答えていきます。
記事のポイント
- ブレーカーを原則として落とすべきでない理由
- ブレーカー操作のメリット・デメリットと潜む危険性
- 不在時に実践すべき最も安全で効果的な節電対策
- 住居タイプや状況別の具体的な注意点と手続き
長期不在でブレーカーを落とす前に知るべきこと
- 落とすとどうなるのか
- 電気代の基本料金は安くなるのか?
- 冷蔵庫のデメリットと注意すべき点
- 一週間程度の不在でも必要か?
- トラッキング火災を防ぐ対策
落とすとどうなるのか
長期不在時にメインブレーカーを落とすと、家全体の電力供給が完全に停止します。これにより、すべての家電製品が機能を停止するため、様々な影響が発生します。
最も分かりやすい影響は、常時稼働している家電が止まることです。例えば、冷蔵庫や冷凍庫の電源が切れ、中の食品が傷んでしまう可能性があります。また、録画予約をしていたレコーダーも作動しません。
さらに、見過ごされがちですが重要な影響もあります。現代の住宅には、目に見えないところで電力を必要とする設備が数多く存在します。
電力停止で機能しなくなる主な設備
- 給湯器の凍結防止機能:冬場にこの機能が停止すると、配管が凍結・破裂し、帰宅時に水漏れという深刻な事態を引き起こす危険があります。
- 24時間換気システム:2003年の建築基準法改正で「24時間換気システムの設置」が義務化されており、常時運転が前提とされています。停止すると湿度やカビが発生しやすくなるため、国交省やメーカーは「原則24時間運転」を勧めています。
- セキュリティシステムやガス警報器:防犯・防災設備が機能しなくなり、安全性が著しく低下します。
このように、単純に電気を止めるという行為は、節電というメリット以上に大きなリスクを伴うことを理解しておく必要があります。

電気代の基本料金は安くなるのか?
ブレーカーを落とす目的の一つに、電気代の節約を挙げる方は多いでしょう。実際に節約効果はありますが、期待するほど大きくないのが実情です。
ブレーカーを落とすことで削減できるのは、主に「待機時消費電力(待機電力)」です。
待機電力とは、家電製品を使用していなくても、コンセントに接続されているだけで消費される電力のことを指します。
経済産業省 資源エネルギー庁の推計(2012年度待機時消費電力調査)では、家庭の年間消費電力量 4,432 kWh のうち待機電力は 228 kWh(約 5.1 %)を占めます。
なお、近年の省エネ家電の普及により、この数値は更に低下している可能性があります。(参考:待機電力ってなに?~知らずに使っている電気~)
つまり、理論上は電気代を約5%削減できる可能性がありますが、これはあくまで家全体の待機電力をゼロにできた場合の話です。
なお、使用量が0kWhの場合の基本料金の扱いは電力会社やプランによって異なりますが、契約を解除しない限り、ほとんどのケースで基本料金は発生します。
ただし、一部の電力会社が提供する「完全従量制」のプランでは、使用量が0kWhであれば基本料金も0円になる場合があります
月々の電気代が10,000円の家庭で待機電力が5%だとすると、節約できるのは月500円程度です。前述した給湯器の破裂やカビの発生といったリスクと、この節約額を天秤にかける必要がありますね。
結論として、電気代の節約効果は限定的であり、そのために重要な設備の機能を停止させるのは、デメリットのほうが大きいと言えるでしょう。

冷蔵庫のデメリットと注意すべき点
長期不在時にブレーカーを落とす際、最も直接的で大きな影響を受けるのが冷蔵庫です。軽視すると、帰宅後に大変な事態に直面する可能性があります。
食品の腐敗と悪臭の発生
当然ですが、電源が切れると冷蔵庫の冷却機能は停止します。庫内の温度は徐々に室温に近づき、肉や魚、乳製品などの生鮮食品は腐敗します。
長期間放置されると、庫内に強烈な悪臭がこびりつき、カビが大量に発生することになります。この状態になると、清掃しても臭いが取れず、最悪の場合、冷蔵庫自体の買い替えが必要になることもあります。
水漏れによる床へのダメージ
冷凍庫の霜が溶けることも大きな問題です。溶け出した水は、冷蔵庫の下にある蒸発皿に溜まりますが、量が多いと溢れ出します。
この水漏れに気づかずにいると、床材が腐食したり、下の階へ漏水したりするといった二次被害につながる恐れがあります。
もし1ヶ月以上家を空けるなど、どうしても冷蔵庫の電源を落とす必要がある場合は、出発の数日前から計画的に準備しなければなりません。
中身を完全に空にし、電源を抜いてから、扉を少し開けた状態で庫内を完全に乾燥させることが不可欠です。密閉すると、わずかな水分でもカビの原因となります。

一週間程度の不在でも必要か?
「3週間の帰省ならまだしも、一週間くらいの旅行でもブレーカーは落としたほうがいいの?」という疑問もよく聞かれます。
結論から言うと、一週間程度の不在であれば、メインブレーカーを落とすことは推奨されません。その理由は、これまでに述べたデメリットが、不在期間の長短にかかわらず発生する可能性があるためです。
例えば、冷凍庫に保存している食品です。一週間電源を落とすだけで、アイスクリームや冷凍食品は完全に溶けてしまいます。
また、一度溶けて再冷凍された食品は品質が著しく劣化します。わずかな節電のために、多くの食材を無駄にしてしまうのは本末転倒です。
さらに、冬場であれば、たった一晩の冷え込みで給湯器が凍結する可能性もゼロではありません。24時間換気システムも同様で、不在期間が短くても、停止させれば湿気がこもりやすくなります。
したがって、一週間程度の短期不在の場合は、ブレーカーには触らず、後述する「不要な家電のコンセントを抜く」という対策に留めるのが最も安全で合理的です。

トラッキング火災を防ぐ対策
長期不在時にブレーカーを落とす理由として「火事の防止」を挙げる方もいます。特に懸念されるのが「トラッキング火災」です。
トラッキング火災とは?
コンセントと電源プラグの間に溜まったホコリが湿気を吸うことで、電気が流れて発熱・発火する現象です。冷蔵庫やテレビの裏など、掃除しにくくホコリが溜まりやすい場所で発生する危険があります。
ブレーカーを落とせば、家全体への電力供給が止まるため、トラッキング火災のリスクを根本から断つことができます。これは明確なメリットと言えるでしょう。
しかし、前述の通り、メインブレーカーを落とすことには多くのデメリットが伴います。そこで、より安全で効果的な対策が推奨されます。
それは、「長期不在時に使用しない全ての家電製品のプラグをコンセントから抜く」という方法です。
これにより、給湯器や24時間換気など、必要な設備の機能は維持しつつ、火災リスクのある待機電力を効果的に遮断できます。
出発前に、家中のコンセントを見て回り、テレビ、パソコン、充電器、電子レンジなど、不要なプラグを一つずつ抜いていくのが最も確実な防火対策になります。
冷蔵庫のように抜けないものだけは、プラグ周りのホコリをきれいに掃除しておきましょう。

長期不在時にブレーカーを落とす安全な方法
- 使わない回路のブレーカーだけ切る
- 操作する正しい順番
- 個別ブレーカーで電気を止めるには?
- マンションやアパートでの確認事項
- 一人暮らしやペットがいる場合の注意
使わない回路のブレーカーだけ切る
長期不在時の最も現実的で安全な方法は、メインブレーカーは入れたまま、分電盤にある一部のブレーカーだけを落とすというものです。
これにより、冷蔵庫や給湯器など必要な設備への電力は維持しつつ、使わない部屋の待機電力を安全にカットできます。
これを実践するために、まずはご自宅の「分電盤」について理解しましょう。分電盤は通常、玄関や洗面所などに設置されており、主に3種類のブレーカーで構成されています。
ブレーカーの種類 | 役割と特徴 |
---|---|
アンペアブレーカー | 電力会社との契約アンペアを決める一番大きなブレーカー。家全体の電気を管理します。 |
漏電ブレーカー | 漏電を検知した際に電気を遮断し、感電や火災を防ぐ安全装置。「テスト」ボタンが付いています。 |
安全ブレーカー(配線用遮断器) | 各部屋やコンセントごとの回路に分かれた小さなブレーカー群。長期不在時に操作するのはこれです。 |
安全ブレーカーには通常、「台所」「洋室」「エアコン」といったラベルが貼られています。
長期不在にする際は、リビングのコンセントやエアコンなど、使用しないことが分かっている回路の安全ブレーカーを「切」にしましょう。
一方で、「台所(冷蔵庫)」や24時間換気システムが含まれる回路は「入」のままにしておきます。

操作する正しい順番
ブレーカーを安全に操作するためには、正しい順番を守ることが非常に重要です。誤った手順は、家電製品の故障につながる可能性もあるため注意してください。
「切る」場合の順番
- パソコンなどの家電製品の電源を通常の手順でシャットダウンします。
- 分電盤の安全ブレーカー(小さいもの)を一つずつ「切」にします。
- 漏電ブレーカー(真ん中のもの)を「切」にします。
- アンペアブレーカー(一番大きいもの)を「切」にします。
ポイントは、末端の回路から順番に電源を落としていくことです。
「入れる」場合の順番
帰宅してブレーカーを「入れる」際は、切ったときと逆の順番で行います。
- アンペアブレーカー(一番大きいもの)を「入」にします。
- 漏電ブレーカー(真ん中のもの)を「入」にします。
- 必要な安全ブレーカー(小さいもの)を一つずつ「入」に戻します。
特にエアコンは、ブレーカーを入れてからすぐには運転せず、数時間待ってから電源を入れるのがおすすめです。コンプレッサーを保護するためで、多くのメーカーが推奨しています。

個別ブレーカーで電気を止めるには?
「使わない回路のブレーカーだけ切る」という方法を実践しようとしても、「どのブレーカーがどの部屋に対応しているか分からない」という場合があります。
ラベルがなかったり、古くて読めなかったりすることも少なくありません。
その場合は、安全な方法で回路の対応を確認することができます。
回路の特定方法(一人でできる)
- まず、全ての安全ブレーカー(小さいもの)を「切」にします。
- 確認したい安全ブレーカーを一つだけ「入」にします。
- 家の中を回り、照明がついたり、コンセントに差した充電器のランプが点灯したりする場所を探します。
- 対応する場所が分かったら、油性ペンなどでブレーカーに「リビング」「寝室」のようにメモをしておきます。
- 確認が終わったらそのブレーカーを「切」に戻し、次のブレーカーで同じ作業を繰り返します。
この作業を一度行っておけば、長期不在時だけでなく、普段の節電やトラブル発生時にも役立ちます。手間はかかりますが、自宅の電気系統を把握しておくことは非常に重要です。
もし、ご自身での確認作業に不安がある場合や、分電盤自体が古く操作が心配な場合は、無理をせず専門の電気工事業者に相談することをおすすめします。
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マンションやアパートでの確認事項
マンションやアパートといった集合住宅では、戸建て住宅とは異なる特有の注意点があります。特にセキュリティシステムとの連携は必ず確認が必要です。
警備会社との連動
比較的新しい物件やセキュリティが充実したマンションでは、各住戸の分電盤が警備会社のシステムとオンラインで接続されていることがあります。
このような物件でメインブレーカーを落とすと、電力供給の遮断を「異常事態」として感知し、警備会社に「障害警報」が自動で送信されてしまう場合があります。
不在中に警備員が出動する事態になりかねないため、ブレーカーを操作する前には、必ず以下の点を確認しましょう。
管理会社や大家さんへの事前確認は必須です。長期不在の予定を伝え、ブレーカーを操作しても問題ないか、特に警報システムと連動していないかを問い合わせてください。
多くの賃貸契約では、1ヶ月以上の不在時には事前連絡が義務付けられています。

一人暮らしやペットがいる場合の注意
一人暮らしの方や、ペットを飼っているご家庭では、さらに特別な配慮が求められます。
一人暮らしの防犯対策
一人暮らしの場合、不在であることが外部から分かりやすいと、空き巣などの犯罪リスクが高まります。
ブレーカーを落とすことでタイマー式の照明などが使えなくなり、夜間に室内が真っ暗なままだと、長期不在のサインになってしまいます。
防犯を重視するなら、あえて一部の照明をタイマーで点灯させるなど、「在宅を装う」工夫も有効です。
ペットの生命に関わる問題
ペットを飼っている場合、ブレーカーを落とすという選択は絶対に避けなければなりません。
ペットのために稼働が必要な設備
- エアコン:特に夏場や冬場、室温管理はペットの健康に直結します。
- 水槽のポンプやヒーター:熱帯魚などを飼っている場合、これらの停止は致命的です。
- 自動給餌器・給水器:タイマー式のものが作動しなくなります。
- ペットカメラ:不在中の様子を確認できなくなります。
ペットを家に残して不在にする場合は、これらの生命維持に必要な設備の電源は絶対に落とさず、万が一の停電に備える対策を考えるべきです。

長期不在でブレーカーを落とす際の判断基準
- 原則としてメインブレーカーは落とさない
- 冬場の給湯器凍結リスクを最優先で回避する
- 24時間換気システムを止めるとカビの原因になる
- 冷蔵庫の電源を落とすには完全な清掃と乾燥が必須
- 一週間程度の不在ならコンセントを抜くだけで十分
- 電気代の節約効果は限定的でリスクに見合わないことが多い
- 火事対策には不要なプラグを抜くことが最も効果的
- 最も安全な方法は使わない回路の安全ブレーカーだけを切ること
- 分電盤の回路は事前に確認しラベルを付けておくと便利
- ブレーカー操作は「末端から切り、根本から入れる」順番を守る
- マンションでは警報システムとの連動を管理会社に確認する
- 長期不在の際は管理会社や大家への事前連絡を忘れない
- 一人暮らしの場合は防犯面からタイマー照明の活用も検討する
- ペットがいる場合、生命維持装置の電源確保は絶対条件
- 最終的な判断は節約メリットと様々なリスクを比較して慎重に行う